Internal Medicine(旧Annual Session)

2003年度(San Diego)

FACP授与式に臨んで

斜里町国民健康保険病院 内科 野津 司

Tsukasa Nozu, MD, PhD, FJSIM, FACP

 

 大学勤務中はなかなか授与式出席の時間がとれず,一般病院勤務となって間もない現在も依然として時間が不足する毎日が続いていましたが,職場の理解もあり今年度の授与式に参加することにしました.私は1996〜98年の2年間,UCLA(ロサンゼルス)に留学していましたので,久しぶりに渡米して留学中に知り合った友人達に会いたいという思いもありました.ところがやっとのことで仕事を調整して渡米の準備をしていると,イラク戦争が勃発し,さらにはSARSと,日本では海外旅行を取りやめるのが当然という雰囲気になってきました.家族からも渡米を見合わせるよう説得されましたが,今回の機会を逃せば式に出席するのは永久に無理と思い強行しました.さすがに飛行機はがら空きで,4つのシートをフルに使って,ロサンゼルス空港到着直前まで熟眠することができました.到着後レンタカーを借り,早速UCLAを訪問しました.あいかわらず巨大なキャンパスで,私が帰国していた間にいくつもの巨大な研究棟が建設され,大統領が代わっても米国では医学研究に莫大なお金が振り分けられていることを再認識しました.ロサンゼルスの街は戦時下の国とは思えないほど,いつもと変わらぬ賑わいでした.それでも車のラジオのアンテナには星条旗が飾られていたり,街角には時折“God Bless Our Troopers”といった垂れ幕がかかっていたりと,少しだけ戦争を感じさせる様子も見ることができました.研究室の友人たちと会って仕事の話もした後,車でサンディエゴに向かいました.
 今回は時間が十分にとれませんでしたので,学会にはエントリーせず,式当日ぎりぎりにチェックインしてそのまま写真撮影を行いました.まわりには日本人は誰もいませんでしたので,待ち時間の間,今回の授与式に出席するいろいろな国(インド,ドイツ,ソマリア)のfellowと雑談をしました.たわいのない話からやがて今の戦争の問題,またFACPとしていかに行動していくかというような内容にテーマがシフトしていきました.自分とは異なり,彼らはFACPとしていかに社会貢献をしていくかということに対して明確なビジョンをもっており,深い感銘と刺激を受けました.また同時にFACPの誇りと義務感を改めて強く認識しました.雑談の中で,私が飛行機に乗るのはこの時期には怖かった,米国に来るのを躊躇したと話すと,多くの人はそれがナンセンスなことだと言って笑いました.なぜならSARSの蔓延地域は日本のすぐ近くのアジアであり,北朝鮮の問題もあり,日本に住んでいる方がはるかにアクシデントに出会う可能性が高いという理由でした.言われてみればもっともな話で,渡米をあれほど恐れる日本人は確かにおかしいのではないかとも思いました.そんなことを話しているうちに授与式は始まり,おかげで他の日本人fellowの皆さんとはほとんどお話しすることができませんでした.授与式は非常に厳粛で感動的なものでした.私は学会にエントリーせずにこの式に出席するためのみに渡米しましたが,自分としては十分意味があるものだったと思います.とんぼ返りでしたが,他国のfellowと話ができたこと,久しぶりにアメリカの風をかんじたこと,留学先の研究室を訪問できたことなど,実りが多い旅でした.
 これから出席する皆さんにもぜひ,他国のfellowと雑談でかまいませんのでお話をしてみることをお勧めします.必ず予期せぬ発見や,FACPの意味などについて,自分でもう一度考え直すきっかけになると思います.また内科専門医会もFACPと同じような授与式を行えれば良いと思います.このような機会が与えられれば,同じ志を持つたくさんの人と交流する機会が得られますので,内科専門医の意味の再認識や,今後の活動への意欲を高めることになると思います.最後に一人でも多くの皆さんがFACPに昇格し,我々とともに世界的な視野を持ったphysicianとして組織的に活動されますことを深く希望いたします.私もこのような精神を持ち続けて,FACP,内科専門医の名に恥じないような活動を皆さんととともに続けたいと思います.