Internal Medicine(旧Annual Session)

2003年度(San Diego)

旅なれない内科医が体験したFACP授与式

長野市民病院 内科 今井康晴

Yasuharu Imai, MD, FACP, FACG, SJSUM, FJSIM

 

 既にこの原稿が掲載される頃にはニュー・オーリンズでの2004年ACP年次セッションも終了し,参加された先生方の手記が掲載されているかもしれませんが,旅慣れない私が体験したFACP授与式の手記を書くことでFACP授与式やACP年次セッションへの参加を迷われている旅慣れない先生方へのご参考になるかと思い,今さらながらご報告させていただくこととしました.この手記を通してACP年次セッションへ一人でも多くの先生が参加する勇気?を持っていただければ幸いです.

1.渡米までの準備

 私は海外留学の経験はなく,新婚旅行でハワイへ行った後は海外旅行でさえほとんど経験がありませんでした.そして英会話も得意ではありません.そんな私が一大決心で参加することを決めた米国マイアミ大学での肝臓病セミナーのため,2001年9月16日の出発に向けて準備を進めていたところ9月11日に同時多発テロが発生し,突然に渡米が中止となりました.この時「やはり私は海外旅行とは縁がなかったのだ.」と自分で納得してしまいました.結局,このセミナーは翌2002年3月に開催されて無事に参加することができました.しかし,米国に到着した直後にシカゴ空港のセキュリティー・チェックで20分間に渡るボディー・チェックを受けてしまい,セキュリティー・チェック恐怖症となってしまいました.
 私は2000年にFACPとして認められましたが,市中病院に勤務しているためなかなか米国まで行ってFACP授与式に参加することを病院に希望できないでいました.しかし,マイアミ大学でのセミナー参加に続き,病院長の寛大な判断によりACPより招待状が届くのが最後となる2003年FACP授与式に参加することが許可されました.これはひとえに寝る時間を惜しんで肝疾患の診療の他に病院感染対策にも携わってきた私へのご褒美かなと自分勝手に思いこんでいます.もちろん,渡米の間,迷惑をかけてしまった病院スタッフの方々には感謝の念でいっぱいです.
 さて,旅慣れない内科医にとって海外旅行の際に大切なことは当然,準備を万端にすることです.インターネットや「地球の歩き方」などから準備するものや海外旅行における心構えに関する情報を得て,さらに必要最小限の英会話はできるようにしました.後で理由を述べますが,ホテルは学会場に最も近いところをお勧めします.多分,そのようなホテルは早めに満室になってしまうので,参加を決めたら即日にホテルを確保するべきと思います.学会の間際になりますと,最終プログラムが送られてくるはずですが,ACPのWeb Pageからも学会中に自分が参加したい講演を選びながらスケジュールを立てることができます.中には予約が必要な講演もあります.今回,私は学会ツアーで最終日の午後にラホヤを観光するコースを予約しましたが,英語が苦手の私一人でも何とか無事に楽しんで参加することができました.タクシーあるいは公共のバスに乗ってラホヤに行くよりは安心して楽しめましたので,気に入ったツアーがあったら早めに申し込むのがよろしいかと思います.さらに旅慣れない内科医にとって最大の問題は空港での乗り継ぎと空港からホテルまでのアクセスでした.当初は前田賢治先生ご推薦の旅行会社に依頼して現地スタッフに案内してもらう予定でしたが,たまたま日程が前田先生と一緒であることを旅行会社から知らされ,旅慣れない私と成田空港からホテルまでご一緒することを前田先生にご快諾いただき,本当に助かりました.前田先生に感謝です.それから,前田先生も私も日本を出発する日までに学会資料一式やツアー・チケットが手元に届きませんでした.過去に参加された先生方の手記にも書いてあったことなのでそれ程心配せずにすみ,年次セッションが開催される前日に前田先生とご一緒に会場へ行って受け取ることができました.前田先生の流ちょうな英語のため私は幸運にも苦労せずに受け取れましたが,どの受付で受け取るのか迷った際に学会スタッフのみなさんはとても親切だったので多分一人でも何とかなったような気もします.ただこのような種々の受付の際にACP会員番号が必要になりますので必ず控えておいた方がよいです.

2.FACP授与式への参加にあたって(写真1)

 授与式記念撮影の当日予約受付は朝9:00からでしたが,8:30に授与式会場前に行くと,受付の準備をしていた写真屋のスタッフがいて,受付開始予定時刻前にもかかわらず撮影の予約をしてくれました.待つこともなく,片言の英語にもかかわらず,何とか予約することができました.これで一安心して,午前のOpening Ceremony,Multiple small Feedingsに参加して,昼食は展示場で配られていたランチボックスで済ませました.次はいよいよレガリアをレンタルし,写真撮影です.朝,予定時刻より早くに写真撮影の受付ができたので,きっとレンタルの受付も受付開始予定時刻より早く始まっているに違いないと判断し,早めに受付へ行くことにしました.すると案の定,午後2:30からの受付開始でしたが,午後2:00前に行っても受付ができました.米国では早め早めに行動する分には相手に不都合を感じさせないようです.逆に遅れるのは絶対にまずいと言うことかもしれません.授与式の受付を済ませ,レガリアを借りたのですが,私は腕が長い体型のため頼んだレガリアの腕の長さが短すぎてしまいました.しかし,レガリアの替えはないとのことで,仕方なく袖の短いレガリアで我慢することになりました.また,レガリアの着方がわからないでいると,授与式受付にいたスタッフが快く手伝ってくれました.写真撮影も予約時刻より大幅に早かったにもかかわらず,片言の英語で無事に撮影することができました.写真撮影に関しては日本で一通りの予約をしてあったはずなのですが,これは全く無視されてその場で改めてどのサイズの写真を何枚撮るかについて聞かれました.こうして午後3:00前には授与式の前に行うべきことをすべて終わらすことができました.FACP授与式は午後5:30に集合でしたので,レガリアを会場の隅で一旦脱いで,会場近くに予約したMarriot Hotel & Marinaの自室に帰って休むことにしました.授与式は午後6:00から2時間くらいのため終了までにお腹が空いてしまうかもしれないので,この時間に軽食を食べることにしました.授与式前に自室で休みたい先生は必ず会場近くのホテルを予約すべきと思います.自室にてレガリアの着方を練習することもできました.
 FACP授与式前に日本からきた一部の先生方と一緒に写真を撮った後,集合場所で列を作って例年のように日本は最後尾で入場しました.米国を初め世界各国から参加している新Fellowのみなさんの顔は自信と希望に満ちあふれていました.私は英語力の無さから彼らに気軽に話しかけることはできませんでしたが,彼らを見ているだけで元気が出て来ました.授与式は今までの先生方が書かれていた通りに進み,最後に誓詞を唱える際は他のみなさんに遅れずに唱えるのに必死でした.授与式が終わるとさすがに空腹となり,レガリアを返却した後にPost-Convocation Receptionに参加しましたが,食べるものはパンにハムとチーズくらいでビール,ワインのつまみだけでした.その後,午後9:00からManchester Grand Hyattで開かれたInternational Networking Receptionに参加したところ,そこにはたくさんの料理が並べられていて,やっと空腹を満たすことができました.その会場では前田先生のおかげでSara E. Walker会長と写真を撮ることができて非常に感激しました.また,渡辺賢治先生が手記に書かれているようにInternational Poster Competitionで受賞され,盛り上がりました.

写真1

3.年次セッションへの参加(写真2)

 前述のように渡米前までに手元に最終プログラムが届かなかったため,私はWebで自分のスケジュールを立てました.自分の専門領域なら少しは英語もわかるだろうと,ランチ付きのMeet the Professor,Esther A. Torres教授によるAbnormal LFTs:Patient Evaluationを日本で予約して参加しました.会場内にはテーブルの上いっぱいに大きなパン,大きなハム,トマト,オレンジ,バナナなどが並んでいました.まさにアメリカのランチと言う感じでした.肝腎の講義内容は簡単な症例提示形式で肝機能障害患者が来たときに順を追って何を考えてどのような検査を進めていくかについて討論を行いました.教授はじゅうたん爆撃的な検査の行い方ではなく,コストを考えた検査の進め方を重視していました.参加者のほとんどが積極的に発言していて,中には料理を選びながら,歩きながらの発言者もいました.どの講演もそうでしたが,講演中に飲食してもとがめられず,むしろ積極的に発言して講演に参加していることが評価されていました.私は英語力の自信のなさから発言できず,寂しい思いをしました.このような講演なら眠たくても起きているしかありませんでしたが,他の多人数が参加する形式の講演では時差ぼけと英語力の無さから襲いかかってくる睡魔に負けそうになることが多々ありました.また,2002年3月に参加したマイアミ大学でのセミナーでお世話になったEugene R. Schiff教授による朝7:00からのEvaluation and Management of Hepatitis CのMeet the Professorに早起きをして参加しました.相変わらずPowerfulな講演で講演中の質問に丁寧に答え,途中退場しようとした参加者をジョークで一喝していました.ちなみにマイアミ大学でのセミナーで私は彼の講義中に時差ぼけによる睡魔に負けそうになり,やはりジョークで一喝されてしまいました.ACP年次セッションはとにかく多数の講演が準備されているので効率よく自分の聞きたい講演に参加していくためには予めスケジュールを立てなければ無理だと思います.展示場では薬の情報を得たり,参加できなかった講演のハンドアウトを手に入れたり,飲み物や軽食で気分転換したりして過ごせることを前田先生に教わり,学会中の疲れを癒すことができました.今後はできれば,Learning Centerで実習できるくらいの英語力を身につけて参加したいと思います.

写真2

4.晩餐会でのひととき(写真3)

 写真にありますようにHotel Del CoronadoのレストランThe Prince Of Walesにて前田先生の御計らいで日本からの参加者による晩餐会が開かれました.ACPのEve C. Swiackiさんも参加して,極上のワインと豪華な料理とみなさんとの楽しいお話で本当にすばらしいひとときを過ごすことができて夢のようでした.ただ今になってその時の料理を何故か思い出すことができないのが不思議です.

写真3

5.学会ツアーに参加して

 わざわざサンディエゴまで来て何も観光しないのは寂しいと思い,学会ツアーの一つである最終日12:30からのAn Afternoon in La Jollaを日本で予約しました.実はツアー申込の締め切りが過ぎていましたが,電子メールで申し込んだところ空きがあったようで予約を認めてもらいました.日本からの参加者は私一人だけで,ほとんどが米国のお年寄り夫婦でした.バスに分乗し,Birch Aquariumを見学した後にLa Jollaの街へ向かいました.とにかくバスから降りたら置いて行かれないように集合時刻と集合場所を必ず確認するように心がけました.ここでもみなさん結構早め早めに行動していて,集合時間に遅れる人はいませんでした.米国で生活する上での鉄則であると感じました.
 今回は前田先生にいろいろお世話になってしまいましたが,留学経験のない私でも一人で授与式,年次セッション,学会ツアーに参加することができました.この手記を通して,これだったら自分でも渡米できるぞと勇気がわいてきた先生方,是非次回のACP年次セッションへ参加して米国の卒後教育を体験していただきたいと思います.そして,その体験をこの4月から始まる研修医制度に生かし,日本内科専門医,ACP日本支部会員が研修医制度のリーダーシップをとっていくことを切に願いたいと思います.最後に渡米をご許可いただいた長田敦夫院長,留守を預かっていただいた病院の先生方やスタッフのみなさま,子供の小学校入学式が重なってしまったにもかかわらず,渡米を許してくれた家族に感謝したいと思います.