Internal Medicine(旧Annual Session)

2004年度(New Orleans)

米国内科学会上級課員(FACP)授与式体験記
−私もFACPになれた−

広島大学大学院医歯薬総合研究科 分子病態制御内科学
寺川 宏樹

Hiroki Teragawa, MD, PhD, FJSIM, FACP

 

1.はじめに

 2004年4月米国内科学会上級会員(FACP)の授与式に参加しましたのでその体験記を書かせて頂きます.本来ならこういうものを書く立場にないのですが,1)私自身この体験記を読みFACPに興味を持ったので,この体験記を呼んで認定内科専門医会の先生方がFACPを取ろうとする何らかのきっかけになって頂ければと考え,また,2)授与式翌日に行われた晩餐会の準備および滞在中に大変お世話になった国際フェローシップ委員会副委員長の前田賢司先生から体験記を書くようにとのmailがあり,体験記を書くことがせめてもの恩返しと考え,非常に稚拙な文章でありますが書くことにさせて頂きました.

2.FACPになろうとした理由

 私は1997年に認定内科専門医会に入りましたが,送られてくる内科専門医会誌に必ずFACP授与式の体験記が載っております.その中でregaliaを着た記念写真を見たとき,今までにない衝撃を感じました.その写真は資格ゲッターの私の心をくすぐるのに十分で,「いつの日かFACPを取ろう.」と誓いました.何事においても形から入る私でしたが,FACPを取ろうとした動機もこのように非常に不純でした.しかし,私のような動機不純人間も中には存在することも事実で,認定内科専門医会でもこのような授与式をやればもっと受験する医者の数が増えるのではないかと考えています.

3.FACPまでの道程

 いきなりFACPに推挙される場合もあるようですが,一般的にはまず会員にならなければいけません.会員になるためには,二人のFACPの先生に推薦人になって頂くことと,curriculum vitae(CV)を書くことが必要です.当時は日本内科学会事務局にお願いしたところすぐにお二人のFACPの先生を推薦して頂けました(現在の事務局はACP日本支部事務局となっており,推薦人に関しては各自でFACPの先生に依頼するようになっているようです).2000年12月に会員の申請をしたわけですが,留学経験のない私にとってCVを書くのは初めてであり,これに時間がかかりました.「国際学会メンバーシップ/フェローシップ出願のための業績のとらえ方と,英文履歴書の書き方」を何回も読みその通りに書きました.しかし,CVは最初の作成のときには時間がかかりましたが,将来FACPに申請することを頭にいれて,その都度追加事項を書き加えこまめにCVをversion upしておきましたので,今回のFACP申請のときのCV作成に関してはほとんど時間がかかりませんでした.2001年4月に会員として認められました.
 FACPになるには会員になってから2年間の期間が必要で,2003年8月にFACPに申請しました.問題は,会員にはなれたものの,果たしてFACPに昇格できる条件を満たしているかということでした.このことは,今までの先生方も書かれていることですが,FACPになるためには4つのルート(研究業績,サブスペシャリティ領域への貢献,教育活動・学会活動,地域医療活動・医師会活動)があります.大学に属しているものの,業績も今ひとつで,教育や地域活動も熱心ではありません.ACP日本支部のインターネット(http://www.icim2002.org/acp/html/index02.html)にも記されていますが,ACPが発行する自己トレーニングを目的とした問題集(MKSAP)への参加やACPへの参加活動なども評価されるようです.私の場合も何か参加しなければならないと考え,MKSAPのprint・CDを548ドルで購入したりしました.はたして私の場合に何が昇格のポイントになったのか定かではありませんが,これらの4つを組み合わせて評価してもらえるような合わせ技1本もあるようです.今年よりACP日本支部ができ支部の総会・講演会・レセプションが日本内科学会講演会にあわせて開催されています.このACP日本支部への参加も重要な学会活動の一つになるようなので,FACPを目指さしている先生方は是非参加されることをお勧めします.このときもお二人のFACPの先生に推薦人になって頂き,何はともあれ2003年11月の段階でFACPに昇格できたとの連絡が入りました.

4.FACP授与式(Convocation ceremony)に参加して

 今年のACPは4月22日よりニュー・オーリンズで開催されました.本年度よりスーパーローテーションが開始となりその頃は病棟がゴタゴタしており,私自身多少心苦しさもあったのですが,前日の4月21日に日本を発ちました.翌22日18時30分よりconvocation ceremonyが行われました.それに先立ち22日の12時より写真撮影が行われました.これに関しては,今までも多くの先生方が体験記にて報告されておりますので,ポイントのみ簡単に書かせて頂きます.まず,collegiate capという黒色の四角い帽子についてです.あらかじめ日本で帽子のサイズを連絡しておきます.この際,送られてきた紙のメジャーで自分の頭のサイズを測定して連絡するわけですが,少し余裕を持たせたサイズを連絡しておいたのですが,実際に帽子をかぶってみたところかなり緩かったのです(図1).帽子が緩いと,日本人の先生方にお会いしたとき頭を下げてしまうと,すぐにずり落ちそうになります.また,convocation ceremonyの途中で,時差の影響か英語の理解力の乏しさから睡魔に襲われてしまい,こっくりしてしまったときにはすぐに帽子がずり落ちそうになりました.できれば,帽子はjust sizeを連絡しておいた方がいいかもしれません.そうでなければ,帽子が落ちないようにヘアピンを持って行くか,サイズが大きければ勇気を出してサイズを変えてもらうかだと思います(これができたのかどうかは確認しておりません).

図1

 次に写真撮影についてです.当日12時から撮影開始であり,撮影会場付近にて撮影時間を予約しているコーナーがありましたので,当日朝に行って予約しました.この際,New Fellows Growing Areaでのチェックインは14時30分となっていました.写真会場でも撮影用のregaliaが用意されており,それを着て写真をとることも可能であるとのことでしたが,自分でオーダーしたregaliaを着て写真を取った方が気分がいいのではないかと考えました.そうであればチェックイン後の14時30分以降になると予想し,写真の撮影時間を14時30分で予約しておきました.今までの先生方の体験記から写真撮影は遅くなれば混雑すると知っていたので,それでも心配になり12時過ぎに撮影会場に行ってみました.その時間であっても(14時30分まで待たなくても)New Fellows Growing Areaで自分のオーダーしたregaliaは借りることができ,すぐに試着しました.そのまま隣の撮影会場に行き,予約は14時30分でしたがすぐに写真をとって欲しいと変更してもらいました.12時台はあまり混んでなかったため変更が容易であったのだと思います.自分が借りていったregaliaはちょうど良いサイズだったのですが,写真撮影には少し大きいサイズのregaliaの方が見栄えがよいとのことで,結局撮影用に用意されたregaliaに着替えました.フードの色は卒業または学位修得大学のスクールカラーとのことでしたが,私自身広島大学のスクールカラーを知りませんでした.あらかじめ広島大学と連絡しておいたのですが,用意されたカラーは青色でした.どういう経緯で青色になったのか私にはわかりませんが(特に日本の場合は適当に決められているような気がするのですが),あまり色にこだわりがなければフードも撮影会場で用意してもらえるようです.そういうことであれば,自分であらかじめオーダーしたregaliaにあまりこだわらず,さっさと写真撮影は当日12時過ぎに予約するか,その時間帯に直接撮影会場に行った方がいいのかもしれません.オーダーする写真のサイズは確かに大きい方が見栄えがいいのですが,値段も高くなります.いろいろ迷いましたが,1)この写真にあこがれてFACPになったのだ,2)死んだらこの写真を葬式用として使用しよう,と自分に言い聞かせ,結局一番大きいサイズにしgold frameにしたところ,送料込みで815ドルになってしまいました.
 Convocation ceremonyに関して,特筆すべきことは今年よりACP日本支部として認められたことです(但し,New Fellows Assembly Areaといってceremonyの前に集合する場所があるのですが,そこでアメリカ各州の名前は張り出されていましたが,Japanという名前はまだなくInternationalという前で待っていました).黒川 清 先生がACP日本支部長としてわれわれの先頭に立って入場して頂き,非常に心強く思うと同時に皆一同感銘を受けました(図2,前田賢司 先生の写真をお借りしました).入場のときに残念だったのは自分で写真やビデオを撮ることができないことでした.日本からも奥様やお母様をお連れになられた先生方がいらっしゃいましたが,写真をお撮りになられる御家族の方も皆そのお顔は晴れ晴れとしておられました.私の場合一人で参加しましたが,非常にうらやましく思いました.もし事情が許せば御家族も御一緒に参加されることをお勧めします.Convocation ceremonyは今までも皆様がその体験記で書かれているように,最初にアメリカ国歌の演奏で感激し,最後にPledgeでまた感激しました.その後,Hilton Riversideにて行われていたInternational Receptionに参加し,日本人の先生方と楽しく歓談させて頂きました.

図2

5.ACPに参加して

 4月22日および23日の空いている時間はACPに参加しました.チケットが必要なものもあり,せっかく参加するのだからと二つ予約しました(一つ25ドル.Registration feeと併せて545ドル).Meet&Eat with the Professor(MTP)は朝7時からあり,いずれも開始には間に合わず30分遅れで行きました.これは聴衆参加型で討論形式になっています.出席者は各自質問・討論していましたが,私は英語が部分的にしか理解できず,黙々とパンを食べていました.専門が循環器のため主に心血管領域のセッションに出ましたが,非常に教育的かつ実用的な内容でした(多くのセッションでPowerpointにて作成されたプリントがあらかじめ配布されていました).Updateな内容に関しても各分野でとりあげており(循環器ならUpdate in cardiology),最新の知見はこれを聞けば大部分理解できるようになっています.全体を通して「そうだったのか.」と思うような内容もいくつかあり,私にとっても非常に有意義なものでした.

6.晩餐会(ACP Japan Chapter Welcome Reception)に参加して

 今までも晩餐会は行われていたようですが,今年よりACP日本支部の正規のレセプションとなりました.ニュー・オーリンズの由緒あるレストランの一つである“Antoine's”にてConvocation ceremonyの翌日の4月23日午後6時から行われました.その中でホスト役の黒川 清 先生が「大リーガーの野茂投手」についてお話しされた内容が印象深かったと思います.つまり,「10年前,野茂投手は何のコネもなく一人で渡米し大リーグで活躍した.10年経た現在,イチロー,松井など多くの日本人大リーガーが活躍している.今年ACP日本支部が設立され,現在のわれわれの状況がまさしく野茂であり,われわれが野茂のようにがんばることにより10年後には多くの日本人がFACPとして活躍していることであろう.」というような内容であったと思います.非常に感銘深いものでありました.その後,多くの日本人の先生方と歓談させて頂き,楽しい一時を過ごさせて頂きました(図3,松村 榮久 先生の写真をお借りしました).

図3

7.おわりに

 FACPになった動機は確かに不純ですが,今回このFACP授与式に参加しまたいくつかのreceptionにて黒川ACP日本支部長を含め何人かの先生方のお話しを聞かせて頂き,FACPになったことの重大さを感じせずにはおられません.写真を撮って喜んでいる場合ではなく,今後少しでもこの分野で「野茂」になれるように一層努力することをこの場をお借りしてお誓い申し上げます.また,今回FACP授与式に御一緒に参加させて頂きました日本の先生方と末永くお付き合いさせて頂ければと存じますので何卒よろしくお願い申し上げます.
 最後になりましたが,この場をお借りして,会員およびFACP申請のときに推薦人になって頂きました徳島大学医学部 板東 浩 先生(板東先生には2回とも推薦人になって頂きました),たかの呼吸器科内科クリニック 高野 義久先生,島根大学医学部 小林 祥泰 先生,申請書を提出する際にいろいろ御尽力頂きましたACP日本支部事務局 宮本 晴子 様,晩餐会の準備など現地でいろいろお世話になりました国際フェローシップ委員会副委員長 前田 賢司 先生,現地で多くの写真を撮って頂きましたACP日本支部副支部長 上野 文昭 先生,convocation ceremonyのとき集合に遅れて半泣き状態になっていたとき暖かく声をかけて頂きさらに私の荷物を奥様に持って頂きました太田綜合病院附属太田熱海病院副院長 山根 清美 先生御夫妻,現地で最後の夜に寝ることができず空港に着いてから安心したのか爆睡してしまいあやうく帰りの飛行機の乗り損ねる寸前だったのを見つけて起こして頂きました関西医大男山病院 小糸 仁史先生御夫妻,山形大学第一内科 橘 英忠 先生,この機会にAmerican College of CardiologyのFellowの推薦人をお願いしたところ快くお引き受け頂きました京都大学大学院医学研究科循環病態学 木原 康樹 先生に,厚く御礼申し上げます.また,これまで私を支えてくれてきた我が家族(美津子,雄貴,真代)にもこの場を借りて深く感謝したいと思います.