Internal Medicine(旧Annual Session)

2004年度(New Orleans)

2004年ACP Convocation Ceremonyに参加して

北摂総合病院 院長 木野昌也

 
北摂総合病院院長 木野昌也

 私は2002年の一月一日にFACPに選任されたが,1回目は2001年のSeptember 11・ニューヨーク貿易センタービルのテロで渡米を中止,2回目2003年はACP年次総会直前の3月に勃発したイラク戦争で急遽参加を取り止め.正に三度目の正直で,今回ニューオリンズで開催されたACP convocation ceremonyに参加することができた.フェローはこの儀式に出席し,フェローとしての宣誓をして初めて正式に認められる.
 今回は,日頃何かと苦労をかけてきた家内に対する罪滅ぼしのつもりで,新婚旅行以来の二人だけの旅行.病院を長く開けることができないので,学会出席だけの,とんぼ返りの慌ただしい旅行ではあったが,子供二人が手を離れ,家事も忘れて夫婦二人だけの時間をとったことで,家内からは結構感謝された.男は中年を過ぎると皆同じ気持ちになるようで,石村顧問,天野Dr,小糸Dr,山根Dr,等々も,夫婦同伴で出席しておられた.
 今年度の学会は,ニューオリンズのミシシッピー川に面して立つEarnest N Memorial Convention Centerで開催された.アメリカの学会に日本の感覚で参加するとひどい目に遭う.私はHead Quarterが置かれているHilton Riversideホテルに滞在していたが,時間に余裕があるのでホテルから歩いてConvention Centerに向かうことにした.しかし入り口に着いてから式が行われるHall I-2の場所を聞くと,「すぐそこですよ」と教えて頂いたのだが,実に巨大,というより信じられない位ばかでかい会場である.Hall A,Hall Bと数えながら歩いたが,いくら歩いても,なかなかたどり着けない.Hall Iに着いた時には,全身汗びっしょり.次からは,少なくともホテルから会場まではシャトルバスに乗る事にした.
 今回,日本から黒川清支部長,上野文昭日本支部副支部長,Credential/Membership Committee委員の前田賢司先生に,わざわざ参加をして頂いた.日本支部から授与式に参加されたフェローは,東理,天野利男,石村孝夫,大成功一,木原康樹,久保恵嗣,小糸仁史,白山武司,鈴木好夫,高林克日己,武田福治,橘英忠,富井啓介,寺川宏樹,南家俊彦,樋口敬和,藤本美香,松村栄久,山根清美,各氏と私の合計20名である.
 2004年4月22日,授与式は午後6時30分から開会されるが,開始の30分前から正装したフェローがメイン会場の側のホールに続々集合してきた.全員で600名ほどであろうか.互いに携帯したカメラで写真をとりあっている.誰もが子供に戻ったように,はしゃぎ回っている.実に素晴らしい笑顔である.われわれも例に漏れずスナップ写真のとりっこ.そうこうしているうちに,メイン会場のオーケストラによる入場行進の音楽が開始され,いよいよフェローの入場である.会場の一番後方の入り口から入場し,支部毎に左右の通路に分かれて正面に向かって行進する.
 我々日本支部のメンバーは黒川清支部長を先頭に,全員が金色のtassel(飾りの房)がついた黒のキャップをかぶり,さらに様々な色のhoodとRegaliaと呼ばれる黒のガウンの正装姿で,左側の通路を通り,家族がカメラを構えて待ち構える中を行進曲に合わせて入場した.以前1992年,FACCの授与式に参列した時にも感じたが,人生の中でも最も晴やかな日である.我々の気分は,これ以上無いほどに高揚していた.
 全員が席につくと,Maceと呼ばれる50インチ(1.3m)の長さの立派な杖を持ったMarshalの司会進行で,まずニューオリンズのHoly Name of Jesus協会の牧師の招詞があり,厳かにConvocation ceremony(授与式)が開始された.次いで,国際内科学会,イギリス(Royal College of Physicians),カナダ,アイルランド,ドイツ,その他,南アフリカ,南米,アジア各国の内科学会の代表者が順番に紹介され,そして,数々の功績のあった人たちが順番に壇上で紹介され,名誉フェローやマスターの称号が与えられた.その中にノーベル医学賞を受賞されたブラウン博士がおられた.それだけでもACPのフェロー授与式が大変な栄誉であることが分かる.学会長であるDr. Whebyは,銀のCaduceusの杖を持ち,学会長の大きなバッジを胸に掛けておられる.欧米の人たち,特にアメリカ人は,何事につけても,ここと言う時には権威をつけ式を盛り上げるのが上手である.本当に感心する.われわれ日本人にも,昔からこのようにきっちりとケジメをつける習慣があったはずである.人生の節目には,それなりのケジメが必要である.参加者一同にとって一生忘れられない会になったに違いない.

図1 黒川清支部長を先頭に入場 図2 続々と入場する日本からのフェロー

 次いで行われたDr. Whebyによる会長講演は,臨床医としての率直な気持ちが吐露され,大変好感を持って聞くことができた.曰く,現在の医療を支える重要なものが二つある.一つは医療技術である.医療知識と技術の進歩は本当に素晴らしい.医療知識や技術をどれだけ身につけているか,それらを評価することは可能である.しかし,もう一つ,医療には欠かすことができない重要な要素がある.それは「人に対する思いやりの心」である.この心は大変重要であるが,それをどの程度身につけているか,残念ながら評価する方法はない.この能力は目に見えるものではないし,簡単に見抜けるものでもない.しかし皆さんがこれからFACPとして社会に出る時,この「思いやりの心」をどれだけ身につけているかが,臨床医としての真の価値を決める.「人に対する思いやりの心」を大切にして頂きたい.このような趣旨であったと思う.
 ここまで話をされた後,Dr. Whebyは,新しく認証されるフェロー達の両側と後方に控えている家族,友人,恩師に立つように促された.そして,フェロー達に,両隣と後ろにいる家族,友人,恩師をしっかりと見るように指示された.この方たちが,あなたの陰で応援し,励まし,育ててくれた人たちです.この方たちがいなければ,今のあなたは無かったのです.これらの人たちの努力に報いるためにも,これからFACPとしてしっかりと頑張ってほしいとの言葉であった.確かに,人生順風満帆な時,人は自分一人の力で今の自分があると驕った気持ちになることがある.しかし少し考えれば,今の自分は,祖先,両親,家族,友人や恩師,さらにはこれまで歩んできた人生の全ての要素,自分を取り巻く全てのもののお陰であることが分かる.これらの要素の内の一つでも欠けていれば今の自分は無かった.「人を思いやる心」とは,自分自身を真摯に見つめることに始まる.大変感動的な瞬間であった.
 Nobles Obligeという言葉がある.エリート階級の義務と訳されるが,医師になり,その中で内科専門医の資格を得,自らの意志でFACPになった我々は,まさにエリートである.これまで社会から受けた恩恵を,何倍にもして社会にお返しする義務がある.
 最後にフェロー全員が起立し,フェローの授与が行われた.今年度は,1500名の新しいフェローが誕生したようであるが,Convocation ceremonyに出席したのは500余名.その中で,最も若いフェローが30歳,最高齢者は83歳とのこと.フェローとしての宣誓は,全員で声を合わせて米国内科学会の誓約文を読み上げるのである.“……米国内科学会の使命を確信し,伝統と規律を重んじ,力の限りを尽くして患者のための医療と米国内科学会の発展に寄与する……”という趣旨である.宣誓が終わると,Marshalの合図で,フェローの全員が帽子の右に垂れ下がったtasselの位置を左側に移動させた.この“tasselの位置の移動”の意味するところは,これがAmerican College of Physiciansの所定の過程を終了した証であり,能力も人格もFACPと呼ぶに相応しい,これからACPの仲間(fellow)として正式に迎え入れましょうということらしい.最後に再びHoly Name of Jesus協会の牧師から祝福を頂き,式は無事に終了した.
 翌4月23日の夜は,午後6時から前田賢司先生のお世話で,支部長の黒川清先生,副支部長の上野文昭先生をお迎えし,日本支部主催のレセプションを初めて開催することになった.ACPからは,Executive Vice PresidentのDr. John Tookerご夫妻,ACP Senior Vice Presidentでもあり,『Annals of Internal Medicine』誌の編集長を務められているHarold C. Sox先生,さらにRobert B. Gibbons先生ご夫妻,ACPの事務方で日本支部開設にも尽力頂いたEve Swiacki女史をゲストに迎えてディナー形式のレセプションが行われた.会場はニューオリンズのフレンチ・クオーターの一角にある『アントワンズ(Antoine's)』というフレンチ・クレオール料理の老舗レストランで,1840年創業とのことで,米国でも一番古いレストランと言われているそうである.壁の至る所に立派な額縁の絵がかけられた格調高い部屋で,一同至福の一時を過ごすことができた.来年のACP年次総会はサンフランシスコで開催される.次回も日本から多くの新しいフェローが誕生することを期待して散会した.

図3 “Antoine'sの会場でスピーチをされる黒川支部長(南家俊彦先生写真提供)
図4 黒川支部長のスピーチに耳を傾ける参加者(南家俊彦先生写真提供)
図5 日本支部主催のレセプション終了後に全員で記念撮影(Antoine'sレストランにて)(樋口敬和先生写真提供)