Internal Medicine(旧Annual Session)

2004年度(New Orleans)

FACP授与式(ニューオリンズ)に参加して

奈良県・松村医院 松村榮久

Yoshihisa Matsumura, MD, FJSIM, FACP

 

レガリアでの記念撮影

 2004年4月22日,着慣れないレガリア(ガウン)と角帽に身を包んだ私は,ニューオリンズのコンベンションセンターの会場の一角にたたずんでいました.FACPの授与式は現地時間の夕方6時半からでしたが,記念写真を希望の人々(私もその一人でしたが)は,早めの時間から正装をして順に写真を撮ってもらっていました.記念写真の希望者は,我々もそうですが米国以外の医師が多かったようです.私の前に並んでいたのはタイから来られたという先生でしたが,背丈や雰囲気は全く日本人そのもので,初対面にもかかわらず不思議な親近感を感じながら挨拶しました.撮影終了後,この正装した格好で教育セッションに戻ることも可能でしたが,それは少々気恥ずかしいので授与式の始まるまでの数時間を一緒にFACP授与式に参加する他の先生方と談笑しながら時間を過ごしたり,FACP授与式のひな壇を背景に写真を写したりしていました.

Congratulation

 ACPの会場となったコンベンションセンターはとてつもなく広く,端から端まではゆうに1kmはあり,日本の地下鉄なら一駅間の距離位になりそうです.会場では皆ネームカードを付けるのですが,新人の我々にはあらかじめNew Fellowと書かれたリボンを頂いており,ネームカードの下に付けて歩いていました.当初広い会場で戸惑った私は,所々の案内係で行き先を尋ねたりしていましたが,その案内デスクで,あるいはホテルのロビー,あるいはエレベーターの中で見知らぬ先生に,Are you a new fellow?Congratulation!とフランクに声を掛けられたり,時には握手を求められたりしました.そのたびに,米国におけるフェローFACPが本当に素晴らしいものと認知されていることを何より強く感じました.

授与式での感動

 さてFACPの授与式は,米国の各州毎に整列して入場していきます.今回私たちは日本支部創立後初めてのACP参加であり,黒川 清先生(Governor)を先頭に20名が入場していきました.その入場式の様子はライトアップもまばゆい中,大きなテレビカメラで撮影され,ひな壇の中央の大きな画面で紹介されていました.私たちの行進の様子もACP出席の方々全員の目に写っていたことになります.授与式は非常に名誉ある式典という雰囲気に満ち溢れていました.式典の後半にはnew fellow全員でFACPのPledge(誓いの言葉)を唱和しました.このようにして正式にfellowshipが授与されると,合図とともに角帽の上の黄色いタッセル(房)を角帽の右から左へと移動させました.このような作法を含めた儀式は日本では余り経験しないものですが,非常に厳粛な気持ちになり,また会場の方々の拍手のなかで周りの人と誰かれとなく握手して喜びあう光景は,とても感動的でした.こうしてFACPとしての喜びと自覚が芽生えてくるのだろうと感じた瞬間でした.

開業医になって感じていたこと

 さて,私は大学にての研修や研究歴もなければ留学経験もなく,ただ臨床畑だけを20年間歩んできました.このような私がFACPをいただくことは,数年前には考えもしなかったことでした.5年前に開業医(というより私の場合は田舎の町医者という方がピッタリですが)になったときに真っ先に頭の中に浮かんだことは,開業医になっても勉強不足にならぬようにするにはどうしたら良いかということでした.何とかup-to-dateな知識と意欲を持ち続けたい,また田舎にいてもそのことが可能であることを実践したいと思っておりました.しばらくして開業医のスタイルに慣れてくると,総合病院に勤務していたときとは見ている視点が違うことがよく分かってきました.そして患者との距離が近い開業医こそがもっと臨床レベルを押し上げ,あるいはもっと情報を発信していくべきであると感じるようになりました.そのためには世界のスタンダードについても良く知る必要があると痛感するようになりました.幸いインターネットやメーリングリストのお陰で,勤務医のときとかわらず色々な情報に触れることができました.
 今回のFACP授与は,そうした思いや模索の中で頂けることになりました.もちろんそれまでには,黒川先生をはじめとした先達の長年のご尽力のお陰であることは言うまでもありません.黒川先生は常々メジャーリーガーのNomo投手(私は近鉄の野茂投手の時から大ファンでしたが)を例にとって,視野を世界に向けること,他との交流試合の重要性を説いておられます.今や情報とIT化の結果,誰でも世界の情報にアクセスできる時代です.医師が自己流,あるいはわが国だけで通用するような流儀で診療できる時代は終焉を迎えつつあると思います.

素晴らしいセミナー

 ACPの年次集会では,このような目的をかなえるための実践的なセミナーや講演が本当に目白押しでした.日本の学会とは一味も二味も違ったもので,ともかく参加者の知識やスキルを向上させる目的で一貫していました.パワーポイントを使ったプレゼンテーションは非常に良く練られており,またどの講師の先生も話上手で,時々ジョークを交えながら(といっても私は笑いの渦に入れませんでしたが)話され,講義はほぼ理解が出来ました.ただ,会場からの質問やそのやりとりはほとんど聞き取れず,自分の英会話能力のお粗末さを恨むばかりでした.今回の私の日程は,日本を水曜日午後に出発(午前11時まで診察),日曜日夕方に帰国(米国には水曜日夕方に到着,土曜日早朝に出発)ということで(大半の先生方のスケジュールがほぼ同様だったようです),時間的にはハードなスケジュールでした.ホテルのロビーでたまたまお会いした米国の黒人の先生には,「遠くから来てもう帰ってしまうのかい?何故(ACP年次集会は土曜日夕方まであるのに)ゆっくり楽しまないのだ?患者の診療よりもその方がもっと大事だろう?」と不思議そうに聞かれました.実際,折角の機会なのでもっとゆっくりしたいのはやまやまですが,田舎の開業医の悲しさ,なかなか長期間診療所を空けるのは難しいのが現状です.しかし日々の臨床に還元できる何かを感じとったり,モチベーションを高めたりするにはとても有意義で貴重な体験でした.

さいごに

 私のこの拙い感想を読んで頂いて,是非私もと思われる先生方も沢山いらっしゃると思います.ぜひとも来年には参加していただければと思います.
 最後になりましたが,このような機会を与えて下さいました黒川 清先生,色々な準備やセッティングをして下さいました前田賢司先生,FACPの推薦文を書いて下さいました花房俊昭先生,宮崎俊一先生,内科学会事務局の宮本晴子様,その他お世話になりました関係の方々に厚く御礼を申し上げて稿を終えたいと思います.

奈良県・松村医院 松村榮久