Internal Medicine(旧Annual Session)

2008年度(Washington DC)

Convocation Ceremonyという贈り物

医療法人社団安藤医院
安藤 聡一郎
Soichiro Ando, MD, PhD, FJSIM, FACP

 

 多くの方たちから祝福され,自分自身に対して,そして仲間に対して誓いを述べる,そんな機会は人生に数えるほどしかないことだと思います.今回,出席する機会を得たACPのConvocation Ceremonyは,私の人生にとって,そのような二度とない機会のひとつでした.結婚式や,私が30代前半に受けたカトリックの洗礼もそのような機会だったと思いますが,それよりもずっと盛大でしたし,今までの努力が報われたという充足感を得たことや,多くの新しい出会いを得たこと,そして何といっても,家族も参加して祝福を頂いたという点で,今までの人生にないすばらしい経験だったと思います.

ACP入会

 私は,2000年に大学病院を退職し,父の診療所の後を継ぎました.内科専門医には1993年になっていましたが,町医者となったこのときに,以前から気になっていたACPへの入会を考えました.病院に勤めているときは,わからないことがあっても相談する相手はすぐに見つかりましたが,開業医となると自分で解決しなければならないことが多くなります.また一方で,自己流でも通ってしまう怖さもあります.自分のレベルを高めるためにも,ACPが提供する情報に近いところにいたいと思いました.また,すでにFACPになられている多くの先生方は私にとってあこがれでもありました.そして,ACPに入会してまもなくのころ,Observer Weekly(現,Internist Weekly)翻訳の参加者を募る連絡がありました.大学を自分の都合で急に辞めてしまい,後輩に対する申し訳なさも感じていましたので,若い人たちの役に立つならばと思い,手を挙げました.これがPublication Committeeとの出会いでした.その活動を通じて,多くの先生方と出会い,何人かの先生にはFACPになることを勧めて頂きました.

Fellow昇格の手続き

 大学に勤めていたころなら論文の業績も少しはありましたが,開業医となってからの自分の業績にはあまり自信がありませんでした.しかし,Fellow昇格の手続きを進めていく過程で,改めてCVを作成し,自分自身の地域医療活動や,医師会での活動,専門学校での講義,患者さんのための健康講座,大学病院でのボランティアの専門外来,そして,Publication Committeeでの翻訳活動など,ACPでは評価していただけそうな「業績」もあり,それらをまとめてみると,結構がんばってるんじゃないかと納得できる気持ちも湧いてまいりました.Fellow昇格の手続きは,これまでの自分のひとつの区切りとして,「記念」となるものでもありました.

Internal Medicine 2008出席に向けて

 そして,いよいよConvocation Ceremonyの日が近づいてまいりました.これまでは,診療所を何日も続けて休むことはできませんでした.夏休みや正月休みといっても,定期的な点滴や注射で来られる患者さんのために,休みの真ん中で注射日を設けていましたし,在宅の患者さんも抱えていますので,遠くに行くというのは気が引けました.しかし,今回は,こういう理由なのでと,患者さんに説明し,近くの先生に在宅患者さんのバックアップもお願いし,大学から午前だけ代診にも来ていただいて,めったに取れない休みを得ました.私にとっては18年ぶりのアメリカ,家族としてははじめての海外旅行であり,妻と娘もこの旅行を大変楽しみにしていました.

Washington DCにて

 Internal Medicine 2008では,Scientific Program SessionsとClinical Skills Trainingに参加しました.Clinical Skills Trainingは少人数の予約制で,唯一予約が取れたPelvic Examを受講しましたが,先生自らが被検者となり,触診の仕方を丁寧に指導して下さいました.今後,在宅医療の現場で役に立つ手技を学ぶことができました.参加して感じたことは,アメリカ人の教育に対する情熱です.彼らは論理的に,豊富な経験に基づいて,そして何より本当に熱心に教えます.学ぶ方も真剣でしたから,私も負けずに多くを吸収しようと努めました.参加したくても参加できなかったSessionはAudio Point CDで聴こうと思い,注文して帰って来ました.約2週間後に2枚のCDが届きました.今でもiPod Touchの画面でPower Pointのスライドを見ながら,1 Session約1時間のレクチャーを聴くことができます.現場の空気を体感してきましたので,帰国してからも学会の雰囲気を楽しむことができます.

 Convocation Ceremonyについては多くの先生がすでに書かれていますように,心に残る場面がたくさんありました.祝福の言葉を頂き,起立して誓いの言葉を読み上げる場面がありました.誓いの言葉の内容はすでに霜山先生が訳されているとおりですが,医師として,専門医として,科学者として,人として,気持ちを新たにする機会となりました.その後,私たちNew Fellowsは着席し,私たち以外の全出席者が起立するという場面も印象的でした.私たちは,ぐるりと正面の大先輩の先生と周囲の家族,友人に囲まれました.そして,私たちに対して,君たちを囲んでいるこの人たちや,ここには来ていないスタッフや患者さんへの感謝を忘れないようにという言葉が送られました.亡父や母,家族,スタッフ,恩師,医局の仲間,そして患者さんたちの顔が浮かび,その場で着席していた私の心は熱くなりました.とても印象に残る瞬間でした.Ceremonyの後には家族で記念のポートレートを撮りました.一生の記念になると思います.

 翌日のJapan Chapterのレセプションもすばらしく,前田賢司先生に助けていただき,多くの方とお話しさせて頂くことができました.中でも,日本支部と関わりの深いBob Gibbons先生と直接お話できたことはとてもうれしいことでした.先生は,私が18年前に留学していたDenver VA Medical Center のRheumatology Clinicで,現在も8月の1ヶ月間だけ指導医をしていらっしゃるとうかがいました.私の留学中には残念ながらお会いしていませんでしたが,私を指導してくださった先生方のこともよくご存じで,大変楽しくお話をさせていただきました.リウマチ医として駆け出しの修業時代を過ごした懐かしの地にゆかりのある先生にお会いできたことは,Convocation Ceremonyに加えて,初心を振り返る機会となりました.

 Washington DCを発ち,日本への帰路,留学していたDenverに立ち寄り,お世話になった方々との18年ぶりの再会も果たし,感謝の気持ちを伝えることができました.懐かしいVA Medical Centerにも寄り,Clinicで指導をして下さったBob Janson先生にもお会いし,Fellow昇格とBob Gibbons先生との出会いなどを報告することができ,大変喜んでくれました.

Convocation Ceremony,今回の旅をふりかえって

 今回の旅は,Fellow昇格という誉を受け,心に刻まれる多くの言葉を頂き,新しい出会いにも恵まれ,また,私のmentorといえる方々に感謝の気持ちを伝えることができた,すばらしい旅でした.

 私は,大学や医局の後輩に,内科専門医をとることや,ACPに入ることを勧めていますが,逆に彼らから質問されるのが,そうすることにどんなメリットがあるんですかということです.私はこう答えることにしています.内科専門医になってよいことはACPに入会できること.ACPに入ってよいことは,ACPの情報をいち早く入手でき,熱心なアメリカの医学教育を受けることができること,それは患者さんのためになること,そして,がんばればFACPになれること.FACPになってよかったことは,今までの努力を評価していただけたこと,Convocation Ceremonyに出席し,多くの方から祝福され,また,医師としての初心に帰るきっかけとなったこと,多くの仲間を得たこと,これからも医師として働いていくことの誇りを得たこと,そう答えることにしています.

 内科専門医からACP入会への道筋を作ってくださった黒川清先生はじめ多くの先輩の先生方,ACP入会のときからお世話になりっぱなしの宮本さん,リウマチ学会ではいつも厳しい質問を頂き,今回Recommendationのお手紙を書いてくださった高林克日己先生,FACPの申請に向けて背中を押してくださった小野広一先生,私が開業医のお手本と尊敬し,レセプションでも大変お世話になった前田賢司先生,難しい翻訳に一緒に取り組んで下さっているPublication Committeeの先生方にこの場をお借りしてお礼申し上げます.

 これからも,この身体の続く限りは医師という仕事を続けていくつもりですが,昨今,医療を取り巻く環境は厳しくなっています.それだけに,このような栄誉と誇りを得たことは私の心の支えとなることでしょう.