Internal Medicine(旧Annual Session)

2008年度(Washington DC)

私とACP: Internal Medicine 2008 
ACP年次セッション(Annual Session)および
FACP授与式(Convocation Ceremony)に出席して
 
社団法人因島医師会 因島医師会病院 
副院長 小野広一
Koichi Ono, MD, PhD, FACC, FAHA, FESC, FJCC,
FJSIM, FACP
 

 私がFACPを目指したきっかけは,今迄に多くの方が述べられているように,1999年に内科専門医になり,送られてきた内科専門医会誌にありました黒川清先生のご高配によるACP入会の案内の記事を読んだからです.漠然と日本の内科専門医になったのだから,次は米国での同様の資格 (?) であるFACPを取ってみよう考えたのです.さっそくACP入会の準備を始めましたが,初めてcurriculum vitae(CV)を作ったのでかなり苦労しました.一度作成して内科専門医会で推薦状ももらって2000年にACPに送ったのですが,この時は返事が来ず,入会が認められたのか認められなかったのか不明でした.しかしこの時作成したCVは留学の際に役に立ちました.

 2001年4月より米国カンザス州カンザスシティにあるThe University of Kansas Medical Center のCardiovascular Research Laboratoryに留学し,しばらくして仲良くなった研究室の実験助手の女の子に頼んでACP本部に問い合わせをしてもらい,結局,入会が認めらなかったことがわかりました.申し込みから約1年が経過していました.当時私も留学したばかりで,英会話力に問題があり,そのつたない英語力で理解したところによると,日本からの入会は,大学や大病院に属する人に認められたもので,一般の勤務医のためではないと言われたように思います(申請時にはNTT西日本の広島中央健康管理センタで産業医として働いていました).さらに,その時,米国でPhDとして働いていて,ACPに入会したいのなら,年会費も安く権利もほぼ一緒のACPのassociate memberとして入会したらどうかと勧められました.ACPのassociate memberであれば簡単な書類の記載と指導者のサインのみでなることができ,推薦状も必要ではありません.そこでラボのボスに頼んで,サインをもらい,その時に「本当にmember でなくassociate memberでいいのか?」と聞かれはしましたが,その言葉の意味もよく分からずに,米国でACP associate memberとしての第一歩を踏み出したのでした. 

 そして留学して5か月が経った2001年9月11日,米同時多発テロ(民間機2機突入でWTC倒壊・民間機1機突入でペンタゴン破壊・ピッツバークで飛行機墜落という痛ましい事件)が起こりました.その後米国内は戦闘状態に入り,空港でのセキュリティ・チェックの強化など様々な制約が始まりました.

  インターネット経由で航空券を購入しようとしたら,テロ対策としての身分照会の為,米国内で発行されたクレジットカードでなければ購入できなくなっていました.日本で作ったクレジットカードでは購入できなかったのです.もちろん米同時多発テロ前は全く問題なく可能でした.この時私は,日本ではクレジットカードを作るのに何の問題もない医者という職業であっても,米国では,有効な医師免許を持たない,身分の不安定な一研究者でしかないことを実感し,米国在住1年目の身で米国でのクレジットカード作成はあきらめるしかありませんでした.実際,米国で一年間生活をするとcredit card勧誘の手紙は何通も来るようになり,試しに4,5か所に応募しましたが,いずれも「Insufficient credit history on fileのため,残念ながら作成できません」という返事が来ていました. しかたなく,その時はJTB USA のChicago支店に電話をしてチケットを購入しました.そんな時,ACP/ASIM(当時)よりcredit card申し込みについての問い合わせの電話がありました.ACPのmemberと権利もほぼ一緒と言われたassociate member にもACPのcredit cardを作成しませんかという手紙が来ていたので,応募していたのでした.電話で担当の方に,2002年6月よりactivate予定のAmerican Heart Association Heartland Affiliate Fellowship Award というgrantに応募していること(あくまでも応募中で,まだ返事はもらっていませんでしたが),米同時多発テロの影響で日本発行のクレジットカードでのオンライン決算ができなくなった事とクレジットカードは日本発行のものを数種類持っている事を説明したら承認されました.その後運良くAmerican Heart Association のgrantも2年間貰えることになり,事後承諾の形にはなりましたが,その時に説明した通りになりました.事情をよくご存じの方ならお分かりかと思いますが,米国在住1年目の身で米国内発行のクレジットカードを持ったのは快挙であり,留学中は,米ドル払いのACP/ASIMのMasterのクレジットカード(写真1)は大活躍しました.その後ACP/ASIMのクレジットカードのおかげで,「Insufficient credit history on fileのため,残念ながら作成できません」という返事が来ていた複数のクレジット会社のカードも難なく作ることができたのでした.

写真1

 このように留学中にACPの組織的実力を実感していたわけですが,2年たって日本内科学会経由でFACPになろうとして,担当の宮本晴子さんにメールで昇格の申請をした時,ACP入会時にラボのボスに「本当にmember でなくassociate memberでいいのか?」と聞かれた意味が分かりました.associate member時代の経歴は,memberとしての経歴にカウントされず,結局FACPになるにはmemberとなってもう2年間経たなければ申請できなかったのでした.その時は教授の異動に伴い2003年9月より米国ルイジアナ州ニューオリンズにあるTulane University Health Sciences Centerの循環器内科に籍を移していましたが,すぐに推薦状を,ラボのボスと,親しくなっていた循環器内科の画像診断専門の教授に書いてもらって,ACPのmemberになりました (注:2004年当時は推薦状2通と英文CVの提出が必要でした.今は総合内科専門医の資格があれば,入会申請書1枚に記入するだけで簡単に入会出来ます) .

 2004年6月に帰国してからは,日本支部に籍を移し,私もACPのmemberとして何か貢献できればと,2005年11月から現在までACP Japan Chapter のPublication Committeeに参加させていただいています.そして,ACP memberとなった2年後の2006年10月1日付けで念願のFellowに昇格することができました.

 Convocation Ceremonyには,ぜひとも参加したいと考えていましたが,昨年のSan DiegoのInternal Medicine 2007は日程の都合がつかず参加を見送り,今回Washington D.C.でのInternal Medicine 2008に参加することにいたしました.当初は家族で参加するつもりでしたが,3泊5日の予定で,スケジュールがtightであることを説明すると娘が行かないと言い出し,結局私一人での参加となりました.航空券は広島空港から成田で乗り換えてWashington D.C.に向かう便を購入しました. 旅行会社の情報では,Washington D.C.では日常的にConventionが行われており,ホテルの価格は高めであると言われ,旅行会社から示されたホテルの値段も実際高めで,仕方なく自分でインターネットで探しました.5月14日は水曜日でビジネスの利用も多い為か,ホテルも強気で値段の高い部屋しかなく,ダレス空港のそばの安いSuburban Hotel Dulles Sterlingというホテルにしました.しかしこのホテルが結構当たりで,ホテルのバンで送り迎えもしてくれて,ホテルの隣の敷地にはWal*Martがあり,夕食や翌日の朝食の食材やお土産を買ったりできました.冷凍食品を購入し,キッチンの電子レンジで温めて食べました.

 翌朝,ホテルのバンで再びダレス空港まで送ってもらい,運転手さんに教えてもらった運賃$3.10のバスでWashington D.C.に向かったのでした.バスの終点のL’Enfant PlazaにはMetroの駅もあり,運賃$1.65でMetroに乗ってMetro Centerで下車し,5月15日と16日の宿泊先のGrand Hyatt Washingtonに向かいました.ホテルには午前10時頃に到着しましたので,まだ部屋には入れず,荷物を預けてすぐに学会場に向かいました.

 学会場では,New Fellowsの名前の一覧が掲示してあり,大変感動しました. しばらくその前で感動してたたずんでいると,5年前にFACPになられて今回Convocation Ceremonyに参加しに来られた武田裕子先生(三重大学大学院 地域医療学講座 教授)に声をかけていただき,写真を撮っていただきました(写真2-4:武田先生ありがとうございました.後ろ向きでボードを見ておられるのが武田先生です.尚,デジカメの日付は日本時間のままです).

写真2
写真3
写真4

 展示ブースに行き,コングレスバッグに入っていた昼食のランチの引換券(Annual Session 2005の前田賢司先生のレポート参照)と交換で,サンドイッチと飲み物を手に入れて,先に見つけていたFACP用の部屋(Internal Medicine 2007の霜山龍志先生のレポート参照)で食事をしょうと席に座ると,New Fellowはネームカードの下にNew Fellowと書いたシールを貼る(Annual Session 2005の前田賢司先生のレポート参照)のですが,それを見た同じ丸テーブルのFellowsからCongratulations!と声をかけてもらい,またまた感動しました.本日5月15日の一番大切な行事はConvocation Ceremonyですので,2004年の体験記に寺川宏樹先生が書かれておられるようにいったんホテルに戻って,チェックインを済ませ,落ち着いたところで学会場に戻りました.

 授与式は,皆さんが体験記に書かれているように非常に厳粛で感動的なものでした.入室して着席後に,支部ごとに名前が呼ばれ新フェロー達が立ち上がるのですが,日本支部の名前が呼ばれて,小林祥泰先生(島根大学医学部附属病院 病院長)に先導された計25名が皆で立ち上がった時には,今回のConvocation Ceremonyに日本支部から参加したフェローが多かったためか,後ろの席の他支部の新フェローらから「おお」という感嘆の声が上がりました.また,各国の内科学会の会長達も壇上にいて私たちのFACP授与を祝ってくれたのが印象的でした.Convocation Ceremony後にせっかくregaliaを着ているのだからと,予約はしていなかったのですが,急遽記念写真を撮ることにしました.宇野久光先生(Publication Committee副委員長で次期委員長,日本赤十字広島看護大学 教授)と吉澤弘久先生(新潟大学 生命科学医療センター 准教授)の両先生も来ておられ,順番を一緒に待ちましたが,我々3人は一人ずつの撮影で,家族で写真を撮るグループと列が異なっていたことやConvocation Ceremony後でInternational reception前という微妙な時間帯が幸いしたのか,まずまずの待ち時間で撮ってもらうことができました.私は一番安い2枚組Package A(送料込みで$300)を購入しました(by Foster Photography, Atlanta, GA).その後,少し遅れてInternational receptionに参加しました.

 16日は,午前中は学会場でNoninvasive Diagnosis of Coronary Artery Diseaseについての演題発表を聞いたり,展示ブースを見たりして過ごしましたが,午後は今回のもう一つの目的であった,ACC(American College of Cardiology)の本部Heart House(2400 N Street, NW Washington DC,隣はWWFの米国本部でした)を訪問しました(写真5).

写真5

 入口前にMan helping man(写真6)という題のすばらしい彫刻があり,まずこれに感激しました.受付でACP学会参加のため日本から来たFACC(ACCのフェロー)であることを告げると,担当者が出てきて,昨年完成したばかりの館内を案内してくれました.館内にはたくさんの会議室があり,その中ではAHA部会との打ち合わせの会議や東芝の新しいMDCTの使い方の説明会などが開かれており,ここから世界に向けて循環器関連の情報が発信されているのかと感銘を受けました.その後,再び学会場に戻り,COX-2 Inhibitorsの最近の知見についての演題発表を聞いたりしました.夕方から日本支部のレセプションに参加し,その流れで吉澤弘久先生と中村浩士先生(山口大学大学院 器官病態内科学 助教)とバーでしばらく歓談しました.その後,Grand Hyatt Hotelに戻ったら,エレベーターの中で偶然Dale先生(David C. Dale, MD, FACP, ACP President, University of Washington, Department of Medicine, Seatle, WA)ご夫妻と一緒になり,話しかけられました.日本支部のレセプションにいたのを覚えてくださっていたのだと思いますが,大変感激しました.しかし,突然であったため,Publication Committeeのボランティア翻訳作業に対してEvergreen awardを2回(2007年はObserver Weekly, 2008年はAnnals of Internal Medicineに対して)も頂いたお礼を申し上げるのを失念していて,かえすがえすも残念だったと思いました.

写真6

 最終日は,帰国予定の日でもありましたが,早めに荷物を詰めてホテルをチェックアウトし,ベルキャプテンに荷物を預けて,午前7時から8時までのClostridium difficile-associated diseaseの最近の知見についての発表を聞きに出かけました.最終日の早朝でありながら,沢山の聴衆がいて,皆,勉強熱心なのには感心しました.空港行きのシャトルバンを9時に予約しており,8時15分からのPrediman K. Shah先生のManagement of Acute Coronary Syndromeについての講演を聞きたいと思いながらも,帰国できなくなったら大変と後ろ髪をひかれる思いで学会場を後にしました.

 わずか3泊5日の米国滞在でしたが,ACPの学会員(特に日本支部の先生方)といろいろ話ができ,帰国後強烈な時差ボケに苦しんだことを差し引いても,刺激的でとても楽しい有意義な経験になりました. FACPになられてもまだConvocation Ceremonyに参加されていない先生方にはぜひ参加していただきたいと思いますし,これからFACPを目指しておられる先生方にはぜひとも頑張っていただきたいと思います.

 最後にFACPになるまでの間に色々な先生方にお世話になりました. Associate memberになるときのサインとmemberになるときの推薦状をいただいた留学時のボスPatrice Delafontaine教授 (Sidney W. and Marilyn S. Lassen Professor of Cardiology; Chief, Department of Medicine, Section of Cardiology; Director, Tulane Cardiovascular Center of Excellence, New Orleans, LA),memberになるときの推薦状をいただいたPaolo Raggi教授(元Tulane大学教授,現Professor of Medicine-Cardiology and Professor of Radiology, Emory University, Atlanta, GA),FACP申請時の推薦状を書いてくださり,共に広島大学の先輩でもある,内科専門医会中国支部前代表の小田健司先生(おだ内科クリニック院長,広島市)とACP日本支部Advisory council memberでWomen's Committee委員長の檜山桂子先生(広島大学原爆放射線医科学研究所 ゲノム疾患治療研究部門遺伝子診断・治療開発研究分野 准教授,広島市),Associate member時代から色々とやり取りをさせていただいたACP日本支部事務局 宮本晴子様に厚く御礼申し上げます.