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Annals of Internal Medicine

(更新日 2007年4月27日)
Annals
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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)


慢性閉塞性肺疾患に対する吸入薬併用療法

Combination Inhaler Therapy for Chronic Obstructive Pulmonary Disease


17 April 2007 | Volume 146 Issue 8 | Pages I-12


「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.


下記の「まとめ」は「慢性閉塞性肺疾患におけるチオトロピウム単独療法とサルメテロールまたはフルチカゾン・サルメテロール合剤との併用療法の検討:無作為化臨床試験」というタイトルの論文からのものものです.


何が問題であり,それについて現在までにどういうことが分かっているのでしょうか?

慢性閉塞性肺疾患は,通常,喫煙によって引き起こされる肺の病気です.この病気 に罹患している患者さんは,息切れを自覚し,時に気道(気管支)の攣縮を生じ,咳 や喘鳴といった症状にも悩まされます.この病気の症状および肺の機能障害は,年月 をかけてゆっくりと悪化します.ほとんどの患者さんは激しい症状の発作も経験しま す.我々内科医は,このような症状の悪化を,急性増悪と呼んでいます.医師は,い ろいろな薬剤を用いて,この病気の治療にあたります.多くは吸入薬または噴霧薬の形態となっており,吸入薬の場合,薬剤はポンプつきの加圧された小さな容器内に溶 解されています.患者さんは,ポンプのマウスピース部分を自分の口腔内に入れ,深 く息を吸い込むと同時にポンプを押します.それから,薬剤が気道に吸収されるよ う,約十秒間息を止めます.標準的な計測機能のついた吸入器の場合,一定量の薬剤 がエアゾルの形で噴出されます.吸入薬の例として,チオトロピウム(商品名スピ リーバ),サルメテロール(商品名セレベント),そしてフルチカゾンとサルメテ ロールの合剤(商品名Advair)等があります.これらの吸入薬は,それぞれ異なる作 用機序を持っています.チオトロピウムとサルメテロールは気管支を拡張させる作用 を持ち,ステロイドの一種であるフルチカゾンは抗炎症作用を持ちます.


この研究の目的は何ですか?

この研究は,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪予防に,3種類の吸入薬を組合せた場合,どの投与法が最も効果があるのかを調査するために行われました.


誰が試験されたのでしょうか?

中等症から重症の慢性閉塞性肺疾患に罹患している449名の成人患者さんに対し,調査が行われました.対象となった患者さんは全て35歳以上で,長年にわたる喫煙歴を有していました.


その研究はどのようにしてなされましたか?

カナダ国内にある27の教育および地域の中核となる医療センターから,対象となる患者さんが募集されました.これらの患者さんは,次の3つの組合せのうち,いずれか一つの治療を受けるよう,無作為に分けられました.すなわち,チオトロピウムとプラセボ,チオトロピウムとサルメテロール,チオトロピウムとフルチカゾン・サルメテロール合剤からなる3グループです.研究者,医師,そして患者さんは,誰がどの薬剤による治療を受けるのか,あらかじめ知らされてはいませんでした.対象となった患者さんは,治療開始後一年間にわたり,追跡調査されました.その後,研究者によって,3グループに分けられた患者さんの,急性増悪,肺機能,そして入院治療を受けたか否かについて検討されました.


研究者達は何を発見しましたか?

症状の急性増悪が出現した割合は,チオトロピウムとプラセボにて治療を受けた患者さんの63%,チオトロピウムとサルメテロールにて治療を受けた患者さんの65%,そしてチオトロピウムとフルチカゾン・サルメテロール合剤にて治療を受けた患者さんの60%でした.チオトロピウムとプラセボにて治療を受けた患者さんに比べて,チオトロピウムとフルチカゾン・サルメテロール合剤にて治療を受けた患者さんは,肺機能,QOLを改善する点において優れており,かつ入院治療を受ける比率はより少ないものでした.なお,肺機能改善および入院治療を受ける割合という点において,チオトロピウムとプラセボにて治療を受けた患者さんと,チオトロピウムとサルメテロールにて治療を受けた患者さんの間に,大きな差はみられませんでした.


研究の限界は何でしょうか?

チオトロピウムとプラセボによる治療を受けた患者さん,およびチオトロピウムとサルメテロールによる治療を受けた患者さんのうち,それぞれ40%以上の患者さんが,調査期間が終わる前に,吸入薬の使用を止めていました.


この研究の意義はどのようなものでしょうか?

チオトロピウムにフルチカゾン・サルメテロール合剤を追加投与することは,中等症から重症の慢性閉塞性肺疾患に罹患している患者さんの肺機能,QOLを高め,かつ入院件数を減らすことができるものの,同疾患を有する患者さんの急性増悪発作の件数を減らすことはできなかったということが,今回の調査にて明らかになりました


(翻訳: 市堰 肇)

English Abstract