Journals

Annals of Internal Medicine

(更新日 2007年4月27日)
Annals
Established in 1927 by the American College of Physicians

患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)


ヘリコバクター・ピロリ除菌に対する順次対標準的3剤併用療法

Sequential Therapy versus Standard Triple-Drug Therapy for Helicobacter pylori Eradication


17 April 2007 | Volume 146 Issue 8 | Pages I-20


「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.


下記の「まとめ」は,「ヘリコバクター・ピロリ除菌に対する順次対標準的3剤併用療法:無作為化試験」というタイトルの論文からのものです.


何が問題であり,それについて現在までにどういうことが分かっているのでしょうか?

ヘリコバクター・ピロリは,通常,子供の時期に人に感染するよくある種類の細菌です.感染による症状の出現がみられるのはおよそ半数です.しかしながら,ヘリコバクター・ピロリに感染した人の中で,後々に胃の炎症(胃炎)や,胃または上部小腸の潰瘍を発症する場合もあります.胃炎や潰瘍は,腹痛や時には出血の原因になります.医師は通常ヘリコバクター・ピロリが原因と考えられる胃痛や潰瘍に対して,複数の抗生物質を数日間処方して治療します.治療によりほとんどの患者さんでヘリコバクター・ピロリを駆除することが出来ますが,15〜30%の患者さんでは治療にもかかわらず感染が継続することがあります.最近では,標準的抗生物質が効きにくいヘリコバクター・ピロリ感染が増えてきています.つまり,ある患者さんではヘリコバクター・ピロリを駆除することがますます難しくなってきており,新しい治療法が必要といえるでしょう.


この研究の目的は何ですか?

4つの抗生物質を順番に投与するほうが,標準的な3つの抗生物質の投与法よりヘリコバクター・ピロリ駆除に有効かどうかを調べることです.


誰が試験されたのでしょうか?

ヘリコバクター・ピロリに感染し,かつ胃痛(消化不良)または消化性潰瘍を患っている成人300名です.


その研究はどのようにしてなされましたか?

患者さんは,無作為に順次投与法と標準的投与法(米国食品医薬品局によって承認されている標準的投与法)に振り分けられました.順次投与法とは,パントプラゾール,アモキシシリンおよび偽薬を5日間投与後にパントプラゾール,クラリスロマイシンおよびチニダゾールを5日間投与する方法で,標準的投与法とはパントプラゾール,クラリスロマイシンおよびアモキシシリンを10日間投与する方法でした.治療の4週と8週後に尿素呼気試験によりヘリコバクター・ピロリ感染の有無をすべての患者さんで検査しました.両時期の検査結果が陰性であれば,感染は治癒あるいは根治したと判断しました.そして,治癒率を2つの治療法で比較しました.この試験中,研究者,医師そして患者さんのいずれもが個々の患者さんにどちらの治療法が行われているかは知りませんでした.


研究者達は何を発見しましたか?

順次投与法(91%)の方が標準的投与法(78%)より,ヘリコバクター・ピロリ感染の治癒率が優れていました.どちらの治療法もほとんど副作用がありませんでした.どちらの治療法でも,約5%の患者さんが胃の不快感を訴え,3%〜5%で軽度の下痢がみられました.


研究の限界は何でしょうか?

順次投与法では,標準的投与法よりも薬剤が一つ(チニダゾール)多く含まれています.この薬剤もしくは順次投与法のどちらがよい結果に繋がったかは判断できません.この試験はイタリアで行われました.その他の国では,それぞれの抗生物質が効きにくい割合が異なる可能性があります.効きにくい割合が異なる他の国では,この試験での抗生物質投与法で効果がみられる割合も異なる可能性があります.


この研究の意義はどのようなものでしょうか?

4つの薬剤の順次投与法は,標準的な3つの薬剤の投与法よりもヘリコバクター・ピロリの駆除に有効でした.


(翻訳: 石黒 洋)

English Abstract