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Annals of Internal Medicine

(更新日 2007年5月14日)
Annals
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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)


B型肝炎ウイルスへの暴露はC型肝炎ウイルス感染患者における肝がんの危険性を高めるか?

Does Exposure to Hepatitis B Virus Increase the Risk for Liver Cancer in Patients with Hepatitis C Infection?


1 May 2007 | Volume 146 Issue 9 | Pages I-59


「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.


下記の「まとめ」は「抗HBc抗体とC型肝炎関連肝細胞癌のリスクについて:前向き研究」という論文からのものです.


何が問題であり,それについて現在までにどういうことが分かっているのでしょうか?

肝炎は,さまざまなウイルス感染によって引き起こされる肝臓の慢性炎症です.このうち,B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)の二つは慢性炎症を引き起こし,次第に肝臓に損傷を与えていきます.肝臓の慢性炎症によって引き起こされる結果の一つとして,肝臓に広範に瘢痕組織が形成されること,すなわち「肝硬変」として知られている状態があります.これに加えて,慢性C型肝炎は,肝がん(「肝細胞がん(HCC)」)のもっとも多い原因です.肝硬変の患者さんは,肝炎のみの患者さんに比べてHCCの危険性がかなり高くなります.慢性C型肝炎の患者さんがHBVにも暴露されるとさらにHCCを発症しやすくなるということを示唆する研究はあるものの,HBVへの暴露が実際どの程度肝がんの危険性を高めるのかについては分かっていません.


この研究の目的は何ですか?

慢性C型肝炎の患者さんにおいて,HBVへの暴露歴がHCCの危険性を高めるのかどうかを明らかにすることです.彼らはまた,インターフェロン(HCV感染の治療に用いられる薬剤)による治療がHCCの発生率に影響をあたえるかどうかも明らかにしたいと考えました.


誰が試験されたのでしょうか?

京都大学およびその関連病院(日本国内)に通院している慢性C型肝炎の患者さん846人が1995年に研究に参加し,2005年まで追跡されました.


その研究はどのようにしてなされましたか?

研究の最初の時点で,研究者は患者さん(すべて慢性のHCV感染あり)を2つのグループに分けました:慢性肝炎の患者さんと,肝硬変の患者さんです.つぎに,HBVへの暴露があるかどうかを調べるために血液検査を行いました.彼らはまた,どの患者さんがインターフェロン療法を受けていたのか,治療がHCVの排除に有効であったかどうか(短期的もしくは持続的に)を調べました.すべての患者さんは,その後10年間にわたってHCCの発症について慎重に追跡されました.そして,それぞれの亜群におけるHCCの発生率を計算しました.


研究者達は何を発見しましたか?

HBVへの暴露は,肝硬変の患者さんで52.2%,肝炎の患者さんで43.6%にみられました.肝硬変でありかつHBVへの暴露歴がある患者さんでは,暴露歴がない患者さんに比べてHCCの発生率は1.5倍以上でした;肝炎であり(肝硬変ではない)かつHBVへの暴露歴がある患者さんに,大きな危険性はありませんでした.インターフェロン療法をうけ,持続した反応があった患者さんにおいては,HCCの発生率は2%未満でした.


研究の限界は何でしょうか?

この研究は,病気にかかった患者さんの集団で起きたことを観察したものであり,インターフェロンの治療を受ける群と受けない群に無作為に分けたものではありません.現在では,従来のインターフェロン単独療法よりもさらに有効なHCV感染に対する治療を受けることが可能です.


この研究の意義はどのようなものでしょうか?

HCV感染のある肝硬変の患者さんにおいては,HBVへの暴露はHCC発症の危険性を高めます.抗ウイルス療法は,HCC発症の危険性を低下させます.


(翻訳: 泉谷昌志)

English Abstract