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Annals of Internal Medicine

(更新日 2008年1月7日)
Annals
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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)


脳への血管の閉塞に対するスクリーニング検査:米国予防医療サービス専門作業部会からの勧告

Screening for Blockages in the Blood Vessels to the Brain: Recommendations from the U.S. Preventive Services Task Force


18 December 2007 | Volume 147 Issue 12 | Page I-36


「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.


下記の「まとめ」は「頸動脈狭窄症のスクリーニング:米国予防医療サービス専門作業部会による勧告声明」と「頸動脈狭窄症のスクリーニング:米国予防医療サービス専門作業部会の最新エビデンス」いうタイトルの論文からのものです.


誰がこのガイドラインを策定しましたか?

米国予防医療サービス専門作業部会であり,この部会は健康予防について勧告を作成する医療専門家によるグループです.


何が問題であり,これまでにどのようなことが分かっていますか?

動脈硬化の過程で,コレステロールや他の脂質は動脈内に集積します.その結果,動脈狭窄や動脈閉塞をひきおこします.頸動脈は,頸部にある血管であり,脳へ血液を送ります.頸動脈狭窄症は,十分な血流を脳へと供給するのを妨げる可能性のある頸動脈閉塞に関連した動脈硬化の状態です.脳への血流が不足すると,一過性脳虚血発作や脳卒中をひきおこしかねません.ひとたび,一過性脳虚血発作が生じましても,脳への血流遮断は,一過性ですから,脳は回復不可能な障害を受けるわけではありません.しかし,一度,脳卒中が発症し,血流遮断が持続すると,脳の一部が死に至ります.


動脈硬化の悪化を防ぐために,頸動脈狭窄症に対する内科的治療法として,(とりわけ)厳格な血圧管理やコレステロールの管理,糖尿病の管理があげられます.外科治療法として,閉塞を解除する手術があります.すでに一度以上の一過性脳虚血発作か脳卒中を経験した頸動脈狭窄症患者さんにおいて,外科手術は将来の一過性脳虚血発作と脳卒中の発症を減らすことも可能です.無症状の頸動脈狭窄症患者さんにおいても,一過性脳虚血発作や脳卒中を,手術により予防可能か否かについては,明らかではありません.


頸動脈狭窄症に対する通常のスクリーニング検査は,超音波検査です.超音波検査は動脈の画像をとるために,音波を使用します.これは妊婦が,赤ちゃんを観察するために受ける検査と同様です.超音波検査の結果を確認するために,血管造影を行う医師や他の検査を行う医師もいることでしょう.血管造影検査は,動脈の良質なX線写真を取れるように,血液中に注入される造影剤を使用します.血管造影そのものが,脳卒中の原因となることもあります.


頸動脈狭窄症の症状が無くとも,高リスクである方は,定期的に頸動脈狭窄症発見のためのスクリーニング検査を受けるべきであり,そうすることによって,頸動脈狭窄症を持つ患者さんが将来の脳卒中の危険性を減らすために外科治療や他の治療を受けることができると考える専門家もいます.しかし,スクリーニング検査のために,将来,決して一過性脳虚血発作や脳卒中には至らないであろうと思われた方たちにも,不必要な血管造影や外科手術を受けることになったり,場合により,検査中に合併症が生じることもありえます.米国予防医療サービス専門作業部会は,頸動脈狭窄症のスクリーニング検査の利益とリスクを比較検討しました.


米国予防医療サービス専門作業部会はこの勧告をどのようにして策定しましたか?

無症状ではあるが,頸動脈狭窄症の患者さんを特定することを目的にして,健常成人において,定期的な頸動脈超音波検査を行うことの利益と弊害を評価するために,米国予防医療サービス専門作業部会は,今までに発表された研究論文を再検討しました.


潜在的利益としては,将来の一過性脳虚血発作と脳卒中にかかる可能性を減らすということが挙げられます.弊害としては,将来,決して症状がでないであろう,頸動脈狭窄症の検査が陽性の患者さんに対して追加検査や外科手術がなされたり,さらには検査や手術による副作用が起きたりすることが挙げられます.


著者らは何を見い出しましたか?

著者らは,無症状の頸動脈狭窄症を有する人たちが外科手術から受ける利益は最小限のものであるという良質のエビデンスを見い出しました.しかしながら,弊害は検査や外科治療の双方から生じます.脳卒中や死亡は,頸動脈手術を受けた100人毎に,約3人生じます.米国予防医療サービス専門作業部会によれば,頸動脈狭窄症をスクリーニングすることの潜在的な弊害は,潜在的な利益を上回る可能性が高いようです.


米国予防医療サービス専門作業部会から,患者さんと医師が何をしたらいいか提案がありますか?

無症状の健康な患者は定期的な頸動脈狭窄症の超音波検査によるスクリーニングを,受けるべきではありません.


この勧告に関する注意点は何ですか?

この勧告は症状のない患者さん達にのみに適用されます.新たな研究結果で,この勧告は変わることがあります.


(翻訳:澤木秀明)

English Abstract