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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)
唾液を用いた迅速口腔ヒト免疫不全ウイルス感染検査
Rapid Oral Testing for HIV Infection
5 August 2008 | Volume 149 Issue 3 | Page I-30
「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.

下記の「まとめ」は「救急診療部における迅速HIV検査から予想を改める」というタイトルの論文からのものです.
何が問題であり,これまでにどのようなことが分かっていますか?
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ)の原因です.AIDSは,本来我々の体に備わっている,病原微生物による感染やある種のがんに対する防御能力が低下する病気です.数種類の薬剤を用いる治療によって,HIVに感染した患者さんの治療成績は向上してきました.HIVは,そのウイルスを含む血液やその他の体液に接触することで人から人に伝染します.HIVに感染してから発病するまでに数年間かかることがあります.

多くの専門家は,思春期の人と成人にHIV感染のスクリーニングを推奨しています.スクリーニングとは,発病を待たずに症状のないうちに感染の有無を検査することです.HIV感染の早期発見は重要です.HIV感染者が自身の感染を認識していれば,他人を感染の危険にさらすことを避けられるからです.担当医は,低下する免疫機能を把握するために感染者を監視し,感染による問題が起こる前に抗ウイルス治療を開始することが可能です.過去には,ほとんどのHIV感染の検査は,一つあるいはそれ以上の血液検査を必要としました.これらの検査では,結果が出るまでに,時にはかなりの日数を必要としました.最近,唾液を用いた迅速口腔HIV検査がいくつか開発されました.しかし,これらの迅速検査がHIVに感染した人々を正確に認識できるかどうかについては,ほとんど研究が行われていません.

この研究の目的は何ですか?
迅速口腔HIV検査(OraQuick,OraSure Technologies社,ペンシルバニア州ベツレヘム)を救急診療部で用いて,HIVに感染している成人を正確に認識できるかどうかを検討することです.

どのような人たちが試験の対象になっていますか?
2007年にボストンの一つの救急診療部を受診した,HIV感染の有無が不明の成人849 名です.平均年齢は約37歳で,約35%が男性,20%が黒人でした.

どのような研究がおこなわれましたか?
研究者らは,都市部の大きな救急診療部を受診した,HIV感染の有無が不明の成人患者さんに協力して貰いました.その中に,生命の危機に瀕していると考えられる患者さんや重症の救急患者さんはいませんでした.研究者らは,対象患者さんたちから唾液を採取し救急診療部の検査室に送りました.検査結果は20分から40分以内に報告されました.結果が陰性の患者さんには,HIVに関する追加検査は行いませんでした.陽性の患者さんには,HIV感染を確認するための各種血液検査が行われました.これらの血液検査には血清酵素免疫測定法,単回血清ウエスタンブロットテスト,CD4陽性リンパ球数,血漿中HIV-1RNA測定が含まれていました.受診当日に確認検査の結果を得ることはできませんでした.その後,研究者らは唾液による検査の結果が陽性でかつ確認検査でHIV感染が確定した患者さんの人数を検討しました.

この研究からどのような結論が出ましたか?
救急診療部を受診した849人の成人のうち39人が,迅速口腔HIV検査で陽性を示しました.確認検査によってHIVに感染していることが確定したのは,この39人のうち5人でした.これは,今回の対象患者さんのHIV感染率が0.6%であることを意味します.この環境の下で,迅速検査の特異度は96.9%(95%信頼区間,95.7%-98.1%)でした.特異度とは,実際に陰性であることを,検査で正しく陰性と判断する確率のことです.

この研究にはどのような限界がありますか?
今回の研究は,都市部の救急診療部一施設だけが対象でした.迅速検査で陰性の患者さんには確認検査を行わなかったため,迅速検査の感度は評価されませんでした.

この研究の意義はどのようなものでしょうか?
迅速口腔HIV検査は,HIVに感染している可能性の高い患者さんを見出すのに役立つかも知れません.しかし,HIV感染率の低い環境では,迅速検査で陽性を示しても追加検査によって,そのほとんどが偽陽性であることが明らかにされるでしょう.

(翻訳:桂 隆志)

English Abstract

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