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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)
前立腺特異抗原を用いた前立腺がんのスクリーニングについて:米国予防医療サービス専門作業部会の勧告
Screening for Prostate Cancer with Prostate-Specific Antigen Testing: U.S. Preventive Services Task Force Recommendations
5 August 2008 | Volume 149 Issue 3 | Page I-37
「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.

下記の「まとめ」は「前立腺癌のスクリーニング:米国予防医療サービス専門作業部会の勧告」と「前立腺特異抗原による前立腺癌のスクリーニングの有益性と有害性:米国予防医療サービス専門作業部会のための最新のエビデンス」というタイトルの論文からのものです.
米国予防医療サービス専門作業部会とは何でしょう?
米国予防医療サービス専門作業部会(USPSTF)は,研究論文を入念に見なおし,予防医学についての勧告を作成する医学専門家集団です.

何が問題であり,これまでにどのようなことが分かっていますか?
前立腺は,膀胱にたまった尿が出て行くときに通る管の周りを取り囲んでいる男性特有の臓器です.精子を運ぶ液体である精液へ水分と栄養を加えます.前立腺がんは皮膚がんを除くと最もよくみられるがんで,男性のがん死の原因として2番目に多いのです.血中前立腺特異抗原(PSA)を測定することにより,無症状の前立腺がんを発見できる可能性があります.しかし,PSA値が異常を示したとしても本当にがんがあるのか確かめるためには,生検という検査が必要です.生検を行うために,医師は前立腺に中空の細い針を刺して前立腺組織を少しだけ採取し,顕微鏡を用いてその組織を観察します.
無症状の前立腺がんを治療することが,患者さんにとって良いことかどうかは明らかではありません.ほとんどの前立腺がんは進行がゆっくりとしていますから,前立腺がんが問題を引き起こす前にがん以外の他の原因で死亡する前立腺がん患者さんがたくさんいます.しかし,早期発見しても患者さんは無用な恐怖におびえ,治療の副作用の危険にさらされます.前立腺がん治療に通常行われる手術や放射線療法は,性機能障害や尿・便失禁を起こす可能性があります.

USPSTFはこの勧告をどのようにして策定しましたか?
USPSTFは研究論文を入念に見なおし,前立腺がんのスクリーニングによる利点と欠点を評価しました.

著者らは何を見出しましたか?
充分な根拠を持ってPSA測定により前立腺がんが発見できる可能性があることが確認できました.しかし,75歳未満の男性にとってスクリーニングにより前立腺がんを発見することによって,症状が発症するまで待つ場合と比較して,前立腺がんで死亡する人がより少なくなるという良質な根拠は見つかりませんでした.75歳以上の男性にとってスクリーニングにより前立腺がんを発見することで得られる利点は無いか,あったとしてもわずかであると考えられました.
スクリーニングにより発見した前立腺がんを治療することで,尿・便失禁や性機能障害や死亡といった副作用が起こりうることについては,充分な根拠が得られました.その他の有害な点としては,前立腺生検に伴う疼痛やPSA検査の結果を心配するといった点が挙げられました.

USPSTFから,患者さんが何をしたらいいか提案がありますか?
75歳未満の男性に対して,PSAを用いた前立腺がんのルーチンのスクリーニングに賛成とも反対ともいえません.前立腺がんのスクリーニングを受けたいと思う男性は,まず主治医の先生と相談することをお勧めします.そして,スクリーニングを受ける前に早期治療による潜在的な利点と問題点について理解することをお勧めします.
75歳以上の男性について,USPSTFは医師へも患者さんへもルーチンの前立腺がんのスクリーニングを推奨しません.なぜならば,利点よりも問題点のほうが大きいと思われるからです.

これらの勧告に関する注意点は何ですか?
本勧告は通常リスクの男性に対しての勧告であり,父親や兄弟に前立腺がん患者さんがいるなどの高リスクの男性についてはあてはまりません.

(翻訳:大島康雄)

English Abstract

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