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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)
妊娠中の深部静脈血栓症の予測
Predicting Deep Venous Thrombosis in Pregnancy
21 July 2009 | Volume 151 Issue 2 | Page I-36
「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.

下記の「まとめ」は「妊娠中の静脈血栓症の予測:完全に間違っているのか?(3つの因子による予測結果)」というタイトルの論文からのものです.
何が問題であり,これまでにどのようなことが分かっていますか?
足の静脈に血の塊である血栓が出来る事があります.血栓は症状を引き起こすこともあれば,時に命を奪うこともあります.血栓が出来た時に見られる症状は主に足の腫れです.血栓は足の静脈の壁から剥がれて,静脈内を血液の流れに乗って心臓や肺に飛んで行く事があります.血栓が肺や心臓の血管に詰まると命を落とす事もあります.足の血管に留まった血栓は,その血管に障害を引き起こし,患者さんの残りの人生の間ずっと,足の痛みと腫れを引き起こします.血栓症を診断し,治療することによってこれらの問題を予防できる可能性があります.足の静脈の画像診断を用いると血栓を正確に診断する事ができますが,その検査結果の解釈は,その患者さんが元々血栓症を起こしやすいかどうかによって左右されます.画像診断の結果を解釈する上で有用な情報である,その患者さんの血栓症の起こしやすさを予測できる因子として,血栓症の既往歴や罹患足の圧痛(筋肉を押すと痛みを生じる)などがこれまでに知られています.妊娠も足の静脈の血栓を誘導する因子として知られていますが,これまでに妊婦が足の痛みと疼痛を訴えた時にチェックすべき因子について研究された事はありませんでした.

この研究の目的は何ですか?
妊婦に血栓があることを予測する臨床的な因子(既往歴や身体所見など)を見出すことが,この研究の目的です.

どのような人たちが試験の対象になっていますか?
2000年3月から2007年4月の間に,カナダの5つの医療機関へ紹介された194名の妊婦が対象となりました.

どのような研究がおこなわれましたか?
まず,内科医・産科医・救急部の医師が妊婦を診察し,血栓症の疑いがあった場合に試験担当医師を呼びました.足の静脈の血栓症について専門家である試験担当医師が,病歴を聴取し,身体所見をとり,患者である妊婦が血栓症である可能性を評価しました.その後,試験担当医師は血栓症の正確な診断のために超音波画像による精密検査を行いました.

この研究からどのような結論が出ましたか?
精密検査の結果17名の妊婦(8.8%)に血栓が見つかりました.妊娠初期・中期・後期のいずれにも偏ることなく血栓症が発症しました.血栓症を予測する重要な因子は,1)妊娠初期にあること;2)血栓の存在する部位の足で少なくとも1インチ(約2.54cm)以上長くなるほど足周径が腫れること;3)左足の症状,でした.これらの所見のいずれもなかった妊婦には,血栓は見られませんでした.

この研究にはどのような限界がありますか?
この研究に参加していただいた妊婦の患者さんのうち血栓症が見られたのはわずか17名でしたので,解析の結果は確実とはいいがたい状況です.言い換えますと,他にもう17名の血栓症が見つかりますと,結果は大きく変わってしまう危険性があります.なぜならば単純に観察対象集団が小さい場合,より大きな対象を観察した結果とは齟齬が出る事がありうるためです.

この研究の意義はどのようなものでしょうか?
妊娠は血栓症のリスクを高めますが,足の腫れを訴える妊婦の中で調べた結果でも血栓症の頻度は高くありません.しかし,妊婦自身と,妊婦を診察する可能性のある医師は3つの血栓症発症予測因子について知っておく必要があります.

(翻訳:大島康雄)

English Abstract

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