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患者さんへのまとめ(Summaries for Patients)
寝たきりの入院患者に低分子ヘパリン療法を延長して行うと,有益性が有害性を上回るでしょうか?
Do the Benefits of Prolonged Low-Molecular-Weight Heparin Treatment Outweigh the Harms in Hospitalized Patients Who Are Bedbound?
6 July 2010 | Volume 153 Issue 1 | Pages I-50
「患者さんへのまとめ」は ,患者さんが近代医学の複雑でしばしば迷わすような用語をよりよく理解することを助けるためにAnnals誌によって提供されるサービスです.

「患者さんへのまとめ」は情報を提供する目的だけのために提示されています.これらの「まとめ」はあなた自身のかかりつけ医からの助言の代わりとなるものではありません.もしあなたが,この題材について疑問を持ったり,あなた自身の健康あるいは状況についての医学的助言を必要とする場合は,あなたのかかりつけ医と連絡をとってください.「まとめ」は非営利的な教育目的のためだけに転載されても構いません.他の用途への使用については,米国内科学会(ACP)によって承認されなければなりません.

何が問題であり,これまでにどのようなことが分かっていますか?
大手術を受けた患者あるいは重症の患者はその病気の過程でしばしば寝たきりとなります.患者が寝たきりになると,足の血流は低下し,血栓を形成しやすくなります.医師は血栓を予防するために‘低分子ヘパリン’として知られている抗凝固剤をよく使用します.しかし,この薬剤は同時に出血の原因にもなります.研究者たちは,手術後1か月間低分子ヘパリンを投与すると血栓を減少させ,1週間の投与と同等の安全性であったことを示しました.手術による寝たきりでなく,重症のために寝たきりになった患者において,この治療を長期に受けると同様の効果と安全性があるかどうかは明らかになっておりません.

この研究の目的は何ですか?
重症のため寝たきりになった患者に対して1か月の低分子ヘパリン療法の追加が,1〜2週間の治療より血栓を予防し,同等の安全性があるかを検討するのがこの研究の目的です.

どのような人たちが試験の対象となっていますか?
370病院において,病気が重篤であるために寝たきりとなった5963人の入院患者が参加しました.

どのような研究が行われましたか?
研究者たちは,すべての被験者に対して1から2週間の低分子ヘパリンを使用しました.無作為に選ばれた半分の患者には,さらに3〜4週間の低分子ヘパリンを追加使用し,残り半分の患者はプラセボを投与しました.研究者たちはそれぞれのグループの経過を観察し参加者の何人で血栓形成が起こり,また重篤な出血イベントを起こしたかを調べました.

この研究からどのような結論が出ましたか?
追加1か月間の低分子ヘパリン治療を受けた参加者において血栓形成が少ないことが分かりました.これらの患者では出血は多かったのですが,追加治療が血栓を予防する効果が,出血の原因となるよりも多いことも分かりました.この調査結果を注意深く調べてみると,女性,75歳以上,かつ浴槽は使えるが離床は許可されない程重篤な患者においてのみこの追加治療では,有害性を有益性が上回っていることを発見しました.

この研究にはどのような限界がありますか?
最初に研究者たちがこの研究を指揮した時には,1か月の追加治療はプラセボに比べ血栓予防の効果がなく,出血も多いと判断しました.そこで次に追加治療が有効かどうか検討するために,血栓形成に関してリスクの高い患者を集めました.その結果,この調査結果は血栓形成のリスクの高い人のみにしか適応できないことになります.

この研究の意義はどのようなものでしょうか?
低分子ヘパリンによる1〜2週間の治療と比較すると,その1か月の延長は,女性,75歳以上,かつ入院中の離床不可能あるいは離床を許可されていない入院患者において,有害性よりも有益性があります.

(翻訳:宮崎泰成)

English Abstract

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