
不健康薬剤スクリーニング
Unhealthy Drug Use: Screening (June 09, 2020)
米国予防医療専門委員会(USPSTF) 推奨声明
US Preventive Services Task Force Recommendation Statement
日本語最終更新日:2026年1月23日
原文リンク
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/drug-use-illicit-screening
(以下は要約の日本語訳の紹介です。詳細は原文を御覧ください。)
(推奨の日本語訳)
推奨の要約:
| 対象 | 推奨 | グレード |
|---|---|---|
| ≧18歳の成人 | USPSTFは、18歳以上の成人における、不健康な薬剤についてのスクリーニングの質問をすることを推奨します。スクリーニングは、正確な診断、効果的な治療、適切なケアを提供あるいは紹介できるときに行うべきです。(不健康な薬剤について質問することをスクリーニングといい、検体を検査することではありません) | B |
| 若年者(10代) | USPSTFは、現時点でのエビデンスは、10代の若年者における、不健康な薬剤のスクリーニングの質問をすることの有益性と有害性の評価を行うには不十分と判断します。 | I |
要約
重要性
米国の多くの人は、不健康な薬剤使用(この推奨においては、違法薬物と、精神活動性に関連する薬剤処方薬の処方目的外使用、つまり、処方されていない薬剤や、処方された個人以外の人物によって使用された場合における、薬剤の使用理由、使用期間、使用量、使用頻度のことを指します)に起因する問題に直面しています。2018年には、18歳以上の米国国民のうち推定12%の人たちが、現在不健康な薬剤使用をしていることが国の調査でわかっています(1)。
不健康な薬剤使用は、18−25歳の若年成人の方に(24%)、高齢者(10%)や12-17歳の若年層(8%)よりも多く見られます。2018年には、15−44歳の妊婦の推定5.4%が、前月に不健康な薬剤使用を行ったと報告されています。18歳以上の成人(10.5%)と12-17歳の若年層(8.0%)では、向精神薬(鎮痛薬はそれぞれ2.1%,1.3%、オピオイド系はそれぞれ1.2%,0.7%)の非医学的な使用よりも、大麻の使用の方が多いと報告されています。
両方の年齢層で、ヘロイン、コカイン、幻覚剤、吸入薬、メタンフェタミンの前月の使用は、1%未満と報告されています。
前年において、800万人以上の12歳以上の人口が、薬物依存や、薬物乱用の診断基準を満たすと推定されています(1)。薬物利用は、防ぎ得る死、傷害、障害の原因のうち最も多いものの一つです(2,3)。
2017年には、不健康な薬剤使用は、7万例以上の致死的オーバードーズ(薬剤過剰摂取)の原因になっています4)。薬剤使用は、多くの重大な健康有害事象を引き起こし、それは薬剤の種類の投与方法、投与量、使用頻度、加えて妊娠の有無によっても異なります(5)。
オピオイドは眠気や呼吸抑制、便秘、昏睡、致死的なオーバードーズの原因となります。
コカインのような刺激性薬物は不整脈や心筋梗塞、痙攣発作、そのほかの合併症の原因となります。マリファナの使用は、反応時間の遅延、バランス、従命、学習、記憶の問題を引き起こし、咳嗽や頻回の呼吸器感染症の原因にもなります(5)。静脈注射薬は、血液を介したウィルスや細菌感染症を引き起こします(2,5)。妊娠中の薬剤使用は、常位胎盤早期剥離や子癇前症、妊娠第3期の出血などの産科合併症に加えて、自然流産、脳の発達異常、早産、低体重、新生児薬物離脱症候群などの胎児と新生児の合併症も引き起こします(6)。薬剤使用は、暴力や犯罪、刑務所への収容、学業や就業能力低下、対人関係の崩壊、その他の社会的、法的な問題につながります(7)。
USPSTFによる、実質的な利益の程度
18歳以上の成人
USPSTFは、不健康な薬剤使用および利用障害の正確な診断と、有効な治療、適切なケアが提供あるいは紹介される場合、不健康な薬剤についてスクリーニングをすることに中等度の実質的なメリットがあることを、中等度の妥当性があると結論づけます。
12−17歳の若年者
エビデンスが存在しないことから、USPSTFは、いずれの不健康な薬剤使用においても、12−17歳の若年者においては、不健康な薬剤のスクリーニングの功罪の結論を出すことは困難であり、有益性と有害性は判断できないと結論付けます。
介入の利点とその根拠
USPSTFでは、エビデンスについての2つのシステマティックレビューの評価を行い、これらは、不適切な薬剤使用スクリーニング、それを検出するためのツールの正確性、 精神的、社会的な介入、薬剤治療のリスクベネフィットを評価しました。
・スクリーニングのためのツールの正確性について
USPSTFは30個の異なるスクリーニングツールを評価し、多くのツールは、不適切な薬剤使用、薬剤乱用あるいは依存、薬剤利用障害の検出感度が75%以上でした。評価については、臨床的あるいは診断のための系統だった医療面接で行われましたが、上記の項目の基準は一貫しておらず、薬剤の利用についても、毛髪や尿検体などの客観的な検査項目を用いたものはほとんどありませんでした(8)。
・スクリーニングによるメリットとデメリット
若年者を含めた成人において、薬剤使用の減少、薬剤関連の健康、社会的、法的アウトカムにおいて、スクリーニングのメリット及びデメリットを直接評価した研究はありませんでした。
精神社会的介入のメリット
精神社会的な介入を行うと、コントロール群と比較して、不適切な薬剤使用をやめることができる可能性が高くなる可能性があります(3−4ヶ月時点では15個の研究でRR1.60 (95%信頼区間 1.24-2.13), 6-12ヶ月時点では14個の研究でRR1.25(95%信頼区間 1.11-1,52)(9)(10) ただし、根拠となる研究のサンプル数、介入方法、追跡完了率に大きなバラつきがあり、一概に推奨できる状態とは言い難いです。
※参考:日本のデータ:
我が国での違法薬物使用の現状は、横ばいから増加傾向で、特に大麻については増加傾向であることが知られています。また、近年は麻薬、覚醒剤としてではなく、合成ドラッグなど別の名称で販売されているケースも増加しています(11)。
日本における、薬物使用の生涯経験率、すなわち不適切使用に関するデータが厚生労働省がから出ており、平成29年度厚生労働科学研究 薬物使用に関する全国住民調査(2017年)としてまとめられています。15歳から64歳の日本人において不適切な薬剤の経験があったのは、2.3%とわずかでした(12)。また、米国を含めた他の先進国と比較したデータも報告されており、調査時期の違いはあるものの、日本での不適切な薬剤使用経験率は他国よりもかなり少ないことがわかります(13)。
米国を含めた諸外国と比べて、そもそもの使用率が大幅に低く、スクリーニングや介入に関する明確なエビデンスは本邦では存在しないのが現状です。
臨床医が知っておくべきポイント
米国での薬剤過剰接種による死亡者数は減少傾向にあるものの、2023年10月から2024年9月の1年間で87000人と多い (10万人中32.6人の死亡)。特にオピオイド関連の死亡が多い14)。一方で、日本での薬物中毒による死亡者数は年間数十人程度と、非常に少ない(15)。
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- 厚生労働省 薬物使用の生涯経験率の推移(1995-2017年)推計値 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/torikumi/dl/index-h30-04.pdf
- 厚生労働省 主要な国の薬物別生涯経験率 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/torikumi/dl/index-05.pdf
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- WHO World Drug Report 2023
https://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/world-drug-report-2023.html
