ACP Japan Chapter

米国の予防接種諮問委員会(ACIP) 推奨:RSウイルスワクチン接種
ACIP Recommendations: Respiratory Syncytial Virus (RSV) Vaccine Immunizations (July 26, 2024)  


日本語最終更新日:2026年2月5日

 

原文リンク:
https://www.cdc.gov/acip-recs/hcp/vaccine-specific/rsv.html?CDC_AAref_Val=https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/acip-recs/vacc-specific/rsv.html   (2026/2/5閲覧)
以下は上記リンク内の
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) Use of Respiratory Syncytial Virus Vaccines in Adults Aged ≥60 Years: Updated Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2024 の要約にあたる箇所の日本語訳です。詳細情報は原文をご覧ください。  

60歳以上の成人におけるRSウイルス(RSV)ワクチンの使用:予防接種諮問委員会(ACIP)の最新勧告 ― 米国、2024年

MMWR;2024年8月15日 / 第73巻(第32号);696–702

要約

RSウイルス(RSV)は、秋から冬にかけて米国の高齢者における呼吸器疾患および入院の主な原因となっています。2023~2024年のRSVシーズンは、RSVワクチンが米国における60歳以上の成人に対して「共有意思決定」に基づき推奨された最初のシーズンでした。

2024年6月26日、予防接種諮問委員会(ACIP)は、この推奨事項を以下のように更新することを決議しました。すなわち、75歳以上のすべての成人、または重症RSV疾患のリスクが高い60~74歳の成人 (下記BOX参照)に食品医薬品局(FDA)承認済みのRSVワクチン(Arexvy [GSK]、Abrysvo [Pfizer]、またはmResvia [Moderna])のいずれかを単回接種することが推奨されます。

すでにRSVワクチンを接種した成人は、追加接種を行う必要はありません。本報告では、これらの更新された推奨事項に関して検討されたエビデンス、ワクチンの市販後の有効性および安全性に関するデータを要約し、60歳以上の成人におけるRSVワクチンの使用に関する臨床指針を提供します。

これらの更新された推奨事項は、最も恩恵を受ける可能性が高い人々におけるRSVワクチン接種率を最大化することを目的としており、誰が最も高リスクであるかを明確にし、以前の「共同意思決定」に基づく推奨に伴う実施上の障壁を軽減することを目指しています。

今後も市販後のモニタリングを継続し、将来の推奨事項の指針とする予定です。

BOX. 60~74歳の成人における重症RSV疾患のリスク因子

  • 慢性心血管疾患例:心不全、冠動脈疾患、先天性心疾患[単独の高血圧は除く])
  • 慢性肺疾患または呼吸器疾患(例:慢性閉塞性肺疾患[COPD]、肺気腫、喘息、間質性肺疾患、嚢胞性線維症)
  • 末期腎疾患または血液透析・その他の腎代替療法への依存
  • 糖尿病(慢性腎疾患、神経障害、網膜症、その他の臓器障害を伴う、またはインスリンやSGLT2阻害薬による治療が必要な場合)
  • 神経疾患または神経筋疾患(気道のクリアランス障害や呼吸筋の筋力低下を引き起こす疾患[例:脳卒中後の嚥下障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー]※ただし嚥下障害で気道のクリアランス障害がない場合は除く)
  • 慢性肝疾患(例:肝硬変)
  • 慢性血液疾患(例:鎌状赤血球症、サラセミア)
  • 重度の肥満(BMI ≧40 kg/m²)
  • 中等度〜重度の免疫不全
  • 介護施設(ナーシングホーム)での居住
  • その他の慢性疾患やリスク因子(医療従事者がウイルス性呼吸器感染症による重症化リスクを高めると判断した場合。例:フレイル、未診断の慢性疾患の存在が疑われる場合、重症RSV疾患患者の医療搬送が困難な遠隔地や農村地域での居住

※参考:日本のデータ:

本邦のRSV感染症サーベイランスは、5類感染症(小児科定点把握)として小児対象に限られており、成人の患者発生動向に関する知見は限られています (1)。高齢のRSV感染者は小児と比較してRSVの排出量が少なく酵素免疫法による抗原検査は感度が20%未満と低く (2)、感度特異度に優れる迅速リアルタイムRT-PCRにより診断されます。本邦でのPCRを用いた高齢者におけるRSV感染症の疫学情報として、行われた時期や対象集団は異なりますが以下のような報告があります。

COVID-19パンデミック以前の市中肺炎発症成人における喀痰RSV検出割合 (3)

2011年から2014年に行われたRT-PCRを用いた日本の市中発症肺炎の病原体に関する多施設疫学調査によると、外来受診もしくは入院した成人肺炎患者の喀痰1201検体のうち4%でRSVが検出されました (3)。

地域在住高齢者のRSV急性気道感染症の罹患率 (4)

2019年から2020年にかけて65歳以上の地域在住、施設入所中の日本人高齢者を対象に高齢者におけるRSVを含む急性気道感染ウイルスの疫学調査が行われました (4)。1000人の高齢者を対象に54週間前向きにフォローした結果、RSVによる急性気道症状は24名(2.4%)に見られました。うち8名(0.8%)が下気道症状を呈し1名(0.1%)が入院しました。この研究でRSVは急性気道感染症で検出されたウイルスのうち、ライノウイルス/エンテロウイルス (10%)に次いで二番目に多く、インフルエンザA (1.1%)、ヒトメタニューモウイルス(1.25%)と同程度の罹患頻度でした。

この結果は本データを含む各国のRSV罹患率、入院率のシステマティックレビューで報告された、RSV急性気道感染発病率の統合推定値(1.6%)、RSVによる入院率の統合推定値(0.14%)と概ね似通っています。海外の知見も合わせると本邦では2019年において60歳以上の高齢者では年間約6,3000人がRSVに関連して入院しており、約4,500人の院内で死亡したと推定されています (5)。

急性上気道炎で外来受診した高齢患者におけるRSV感染症の有病割合 (6, 7)

COVID-19パンデミック宣言中の2021年8月から2023年2月に行われた病院・診療所外来を受診した急性上気道感染症患者を対象とする多施設疫学調査では、2021年と2022年度のRSV流行期(8月〜2月)に急性気道感染症で受診した60歳以上の患者に占めるRSV感染の有病割合はいずれも2.8%でした (6)。2021年度についてはRSV流行期後(3月〜7月)の有病割合も報告されており、急性上気道感染症のうちRSV感染が占める割合は1.5%でした。RSV急性気道感染症と診断された患者のうち37.5%が急性下気道感染の基準を満たしました。

また、2023年度の冬季シーズン(2023年12月〜2024年3月)に行われた2次, 3次医療機関を受診した急性上気道感染症患者を対象とした多施設疫学研究では、65歳以上の上気道感染患者に占めるRSVの検出割合は0.6%でした (同時期の同年代のSARS-CoV2、インフルエンザウイルスの検出割合はそれぞれ18.6%, 2.8%) (7)。

本邦においてはアレックスビー®︎、アブリスボ®︎の2ワクチンが、60歳以上の者または50歳以上でRSV感染症が重症化するリスクが高い者(慢性肺疾患、慢性新血管疾患、慢性腎臓病、慢性肝疾患、糖尿病、神経疾患、神経筋疾患、肥満、その他医師が接種を必要と認めた者)に対して1回0.5mlの筋肉内接種が承認、販売されています。また2025年5月にはmRNAワクチンのエムレスビア®︎の製造および販売承認されたことが発表されています。

日本の他の学会からの推奨

  • 日本プライマリ・ケア連合学会 (2026/1/5) 日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会によるこどもとおとなのワクチンサイトではRSVワクチンに関して米国疾病管理予防センターの推奨に基づき、60歳以上で特にRSV感染症の重症化リスクの高い成人(高齢者、慢性の心臓または肺疾患のあるもの、免疫が低下しているもの、特定の基礎疾患のあるもの、施設入所者)に対して、接種の必要性について担当医とよく相談するよう紹介しています (8)。
  • 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会 (2025) 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会は、「成人のRSウイルスワクチンに関する見解」において、公衆衛生危機管理上の重点感染症に指定されているRSV感染症の感染対策として、高齢者に対するRSVワクチン接種を推奨しています (9)。

参考文献

  1. 国立感染症研究所所. IASR 高齢者のRSウイルス感染症. https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/8476-466r03.html (2026.2.5閲覧)
  2. Nam HH, Ison MG. Respiratory syncytial virus infection in adults. BMJ. 2019 Sep 10;366:l5021. doi: 10.1136/bmj.l5021. PMID: 31506273.
  3. Morimoto K, Suzuki M, Ishifuji T, Yaegashi M, Asoh N, Hamashige N, Abe M, Aoshima M, Ariyoshi K; Adult Pneumonia Study Group-Japan (APSG-J). The burden and etiology of community-onset pneumonia in the aging Japanese population: a multicenter prospective study. PLoS One. 2015 Mar 30;10(3):e0122247. doi: 10.1371/journal.pone.0122247. PMID: 25822890; PMCID: PMC4378946.
  4. Kurai D, Natori M, Yamada M, Zheng R, Saito Y, Takahashi H. Occurrence and disease burden of respiratory syncytial virus and other respiratory pathogens in adults aged ≥65 years in community: A prospective cohort study in Japan. Influenza Other Respir Viruses. 2022 Mar;16(2):298-307. doi: 10.1111/irv.12928. Epub 2021 Nov 3. PMID: 34730287; PMCID: PMC8818832.
  5. Savic M, Penders Y, Shi T, Branche A, Pirçon JY. Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: A systematic literature review and meta-analysis. Influenza Other Respir Viruses. 2023 Jan;17(1):e13031. doi: 10.1111/irv.13031. Epub 2022 Nov 11. PMID: 36369772; PMCID: PMC9835463
  6. Ohbayashi H, Sakurai T, Himeji D, Fukushima Y, Takahashi H, Kiyosue A, Sabater Cabrera E, Matsuki T, Molnar D, Preckler Moreno V, Damaso S, Pirçon JY, Moitinho de Almeida M. Burden of respiratory syncytial virus infections in older adults with acute respiratory infection in Japan: An epidemiological study among outpatients. Respir Investig. 2024 Sep;62(5):914-921. doi: 10.1016/j.resinv.2024.06.003. Epub 2024 Aug 9. PMID: 39126825.
  7. Matsumura Y, Yamamoto M, Tsuda Y, Shinohara K, Tsuchido Y, Yukawa S, Noguchi T, Takayama K, Nagao M. Epidemiology of respiratory viruses according to age group, 2023-24 winter season, Kyoto, Japan. Sci Rep. 2025 Jan 6;15(1):924. doi: 10.1038/s41598-024-85068-7. PMID: 39762485; PMCID: PMC11704254.
  8. 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会ワクチンチーム.こどもとおとなのワクチンサイト. RSウイルスワクチン.
    https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=2&nid=142 (2026.2.5閲覧)
  9. 一般社団法人日本感染症学会. 成人のRSウイルスワクチンに関する見解 (日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会). https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/251211_rs_kenkai.pdf (2026.2.5閲覧)
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