ACP Japan Chapter

心血管疾患の1次予防としてのスタチン
Statin Use for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease in Adults: Preventive Medication(August 23, 2022)

米国予防医療専門委員会(USPSTF) 推奨声明
US Preventive Services Task Force Recommendation Statement 
日本語訳最終更新日:2026年4月7日

原文リンク
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/statin-use-in-adults-preventive-medication
(以下は要約の日本語訳の紹介です。詳細は原文を御覧ください。) 

(推奨の日本語訳)

推奨の要約:

対象 推奨 グレード
40-75歳でCVDリスク因子を1つ以上もつ10年間の推定CVD発症リスクが10%以上の方 USPSTFは、40から75歳で1つ以上のCVDリスク因子(脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙)をもち、推定CVD発症リスクが10%以上の方にCVDの1次予防としてスタチンを推奨する。 B
40-75歳でCVDリスク因子を1つ以上もつ10年間の推定CVD発症リスクが7.5%以上、10%未満の方 USPSTFは、40から75歳で1つ以上のCVDリスク因子(脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙)をもち、推定CVD発症リスクが7.5%以上、10%未満の方は選択的にスタチンを処方することを推奨する。この群では推定CVD発症リスクが10%以上の方に比べると利益が得られる可能性が小さくなる。 C
76歳以上の方 USPSTFは、76歳以上の方にCVDの1次予防としてスタチンを開始することに関して、利益と害のバランスを評価するために、現在のエビデンスは不十分であると結論づけている。 I

*CVD(Cardiovascular disease):アテローム性動脈硬化性疾患を指し、虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患を含む

要約

重要性

心血管疾患(CVD)は米国において罹患率・死亡率の主な原因となっており、1/4以上の人がCVDで亡くなっている。冠動脈疾患は特に主要な死因であり、米国においてCVDによる死亡の43%を占めている。2019年には55.8万人が冠動脈疾患で、10.9万人が虚血性脳卒中で死亡したと推定される。

目的

2016年の推奨を更新するため、CVD罹患率やCVD関連死、全死亡の低下のためにスタチンを用いることの有益性と有害性について、最新のエビデンスの再確認を依頼した。


対象者

CVDの既往がなく、CVDの兆候や症状がない40歳以上の成人。

エビデンスの評価

USPSTFは、40-75歳でCVD既往がなく、CVDリスク因子(例: 脂質異常症、糖尿病、高血圧や喫煙)を1つ以上もつ10年間の推定CVD発症リスクが10%以上の成人に対し、CVDの発症や全死亡率を減少させるためにスタチンを内服することは、害を差し引いて少なくとも中程度の利益があると結論づけた。USPSTFは、40-75歳でCVDリスク因子を1つ以上もつ10年間の推定CVD発症リスクが7.5%以上10%未満の成人に対するスタチン内服によって少なくともわずかな利益があると結論づけた。USPSTFは、76歳以上でCVDの既往がない方に、CVDの1次予防としてスタチンを開始することに関して、利益と害のバランスを評価するために、エビデンスは不十分であると結論づけた。

推奨

USPSTFは、40から75歳で1つ以上のCVDリスク因子(例:脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙)をもち、推定CVD発症リスクが10%以上の方にCVDの1次予防としてスタチンを推奨する(B推奨)。
USPSTFは、40から75歳で1つ以上のCVDリスク因子(脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙)をもち、推定CVD発症リスクが7.5%以上、10%未満の方は選択的にスタチンを処方することを推奨する。この群では推定CVD発症リスクが10%以上の方に比べると利益が得られる可能性が小さくなる(C推奨)。
USPSTFは、76歳以上の方にCVDの1次予防としてスタチンを開始することに関して、利益と害のバランスを評価するために、現在のエビデンスは不十分であると結論づけた(I声明)。

参考:日本のデータ

米国では冠動脈疾患が多く、脳卒中の中でもアテローム血栓性梗塞が多いことから冠動脈疾患と脳卒中をひとまとめにしたリスク予測スコアが用いられています(1)。一方で日本の年齢調整CVD死亡率は3.56/1000人年と、米国の11.75/1000人年と比べ低くなっています(2)。以前は日本の脳卒中割合は米国に比べ多いとされていましたが、2021年の調査では人口10万人あたりの脳卒中による年齢調整死亡率は日本の男性で37.68、日本の女性で20.65、米国の男性で31.21、米国の女性で28.94でした(3)。また、日本では脂質異常症(高LDL-C血症)と正の相関を認めるアテローム血栓性梗塞の割合が米国に比べて低いことが知られています(4)。これらのことから、米国の疫学状況と本邦の状況は異なることが予想されます。日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、日本の疫学状況に合わせた推奨を提示しています。このガイドラインでは脂質異常症と関連する動脈硬化性疾患として冠動脈疾患とアテローム血栓性梗塞を合わせた発症予測スコア(久山町スコア)が用いられています(5)。

日本の他の学会からの推奨

日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(6)

  1. Curtin S, Tejada-Vera B, Bastian B. Deaths: Leading Causes for 2022 [Internet]. National Center for Health Statistics (U.S.); 2024 Nov. Available from: https://stacks.cdc.gov/view/cdc/164020
  2. Liu L, Miura K, Fujiyoshi A, Kadota A, Miyagawa N, Nakamura Y, Ohkubo T, Okayama A, Okamura T, Ueshima H. Impact of metabolic syndrome on the risk of cardiovascular disease mortality in the United States and in Japan. Am J Cardiol. 2014 Jan 1;113(1):84-9. doi: 10.1016/j.amjcard.2013.08.042. Epub 2013 Oct 3. PMID: 24169008.
  3. Yang L, Fan L, Cao Y, Liu X, Yang C, Luo Y, Zhang J. Trends in stroke incidence and mortality in China, Japan, and South Korea (1990-2021) with projections to 2035. Sci Rep. 2025 Jul 14;15(1):25370. doi: 10.1038/s41598-025-10840-2. PMID: 40659790; PMCID: PMC12260053.
  4. Hata J, Kiyohara Y. Epidemiology of stroke and coronary artery disease in Asia. Circ J. 2013;77(8):1923-32. doi: 10.1253/circj.cj-13-0786. Epub 2013 Jul 11. PMID: 23842096.
  5. Okamura T, Tsukamoto K, Arai H, Fujioka Y, Ishigaki Y, Koba S, Ohmura H, Shoji T, Yokote K, Yoshida H, Yoshida M, Deguchi J, Dobashi K, Fujiyoshi A, Hamaguchi H, Hara M, Harada-Shiba M, Hirata T, Iida M, Ikeda Y, Ishibashi S, Kanda H, Kihara S, Kitagawa K, Kodama S, Koseki M, Maezawa Y, Masuda D, Miida T, Miyamoto Y, Nishimura R, Node K, Noguchi M, Ohishi M, Saito I, Sawada S, Sone H, Takemoto M, Wakatsuki A, Yanai H. Japan Atherosclerosis Society (JAS) Guidelines for Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2022. J Atheroscler Thromb. 2024 Jun 1;31(6):641-853. doi: 10.5551/jat.GL2022. Epub 2023 Dec 19. PMID: 38123343; PMCID: PMC11150976.
  6. 動脈硬化性疾患ガイドライン [Internet]. Available from: https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_3_230210.pdf
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