ACP Japan Chapter

乳がん:スクリーニング
Breast Cancer: Screening(April 30, 2024)

米国予防医療専門委員会(USPSTF) 推奨声明
US Preventive Services Task Force Recommendation Statement 
日本語訳最終更新日:2026年4月5日

原文リンク
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/breast-cancer-screening
(以下は要約の日本語訳の紹介です。詳細は原文を御覧ください。) 

(推奨の日本語訳)

推奨の要約:

対象 推奨 グレード
40歳から74歳までの女性 USPSTFは、40歳から74歳の女性に2年に1回スクリーニングマンモグラフィーを推奨している。 B
75歳以上の女性 USPSTFは、現時点では、75歳以上の女性におけるスクリーニングマンモグラフィーの利害のバランスを評価するには不十分であると結論付けている。 I
高濃度乳房の女性 USPSTFは、検診マンモグラフィで高濃度乳房が確認された女性において、乳房超音波検査または磁気共鳴画像法(MRI)を用いた乳がんの補助的検診の有益性と有害性のバランスを評価するには、現在のエビデンスは不十分であると結論付けている。 I

要約

重要性

米国の全女性の中で乳がんは2番目に多いがんであり、がんによる死亡原因としても2番目に多い。2023年には、推定で43,170人の女性が乳がんで死亡した。非ヒスパニック系白人女性は乳がんの罹患率が最も高く、非ヒスパニック系黒人女性は死亡率が最も高い。(1)

目的

USPSTFは、次のことを評価するために系統的レビューを外部に依頼し、さらにその結果を補うために共同モデリング研究も行った。具体的には、マンモグラフィーを中心とした乳がん検診について開始年齢と終了年齢、検診の間隔、検査方法(モダリティ)、超音波やMRIなど追加の画像検査を行うかどうか、あるいは個人のリスクに合わせて検診を調整するかどうかといった「検診のやり方」の違いが、乳がんの発症や進行がんへの進展、乳がんによる健康被害(罹患・治療負担)、そして乳がんによる死亡または全死亡にどのような影響を与えるかを比較して調査した。(1)


対象集団

乳がんの平均リスクにある、40歳以上の女性および出生時に女性として産まれたすべての人。(1)

エビデンスの評価

中等度の確実性をもって、40〜74歳の女性における2年ごとのスクリーニングマンモグラフィーは中等度の純利益があると結論づけた。75歳以上の女性におけるスクリーニングマンモグラフィーの利益と害のバランス、ならびに乳房密度によらず乳房超音波またはMRIによる乳がんの補助的スクリーニングの利益と害のバランスを判断するには、エビデンスが不十分であると結論づけた。(1)

推奨

40〜74歳の女性に対して2年ごとのスクリーニングマンモグラフィーを推奨する。(B推奨)
75歳以上の女性におけるスクリーニングマンモグラフィーの利益と害のバランスを評価するには、現在のエビデンスが不十分であるとした。(I声明)
他に異常のないスクリーニングマンモグラムで高濃度乳房と判定された女性において、乳房超音波検査またはMRIを用いた乳がんの補助的スクリーニングの利益と害のバランスを評価するには、現在のエビデンスが不十分であると判断した。(I声明)(1)

※日本のデータ:

疫学・リスク

日本では女性の乳がんは、悪性腫瘍の中で最も多く、死亡数は第4位である(2)。日本人女性10万人あたりの粗罹患率は153.2、粗死亡率は25.7で、年齢調整罹患率及び年齢調整死亡率は欧米諸国と比較して各々2分の1程度、3分の2程度である(2,3,4)。日本では乳がん罹患の年齢別ピークが45〜49歳にあり、40代は検診上きわめて重要な年齢層である(5)。加えて、日本人女性では高濃度乳房が多く福井県と愛知県の報告では40代で54.9〜68.8%、全年齢層でも約40%を占める(6)。厚生労働省資料でも高濃度乳房の女性の割合はアジア人で6〜7割、欧米人で4〜5割とされており、マンモグラフィでは病変が検出しにくいことが示されている(7,8)。

日本では乳がん罹患が45~54歳で高く、家族歴やBRCA1/2病的バリアントに加え、高濃度乳房も乳がんリスク因子として重要である(4)。また、飲酒、肥満、喫煙などの生活習慣関連因子も乳がんリスクに関与することが示されている(4)。高濃度乳房は乳がんリスク因子であると同時に、マンモグラフィ感度を低下させる点でも重要である(4,8)。したがって、日本の乳がん検診は、比較的若年での発症ピークと高濃度乳房という、発見を難しくしうる背景を踏まえて考える必要がある。

日本の乳がん検診の現状

日本の住民検診としての乳がん検診は、市町村が実施主体となる対策型検診であり、40歳以上の女性を対象に、受診を特に推奨するのは40〜69歳とされ、質問(問診)および乳房エックス線検査(マンモグラフィ)を原則2年に1回行い、視診・触診は推奨されていない(8,9)。住民検診とは別に、保険者や事業主が実施する職域検診や、個人が任意で受ける人間ドック等も存在する(8)。米国USPSTFの40〜74歳女性に対する隔年マンモグラフィ推奨(1)と比べると、日本は上限年齢の設定に違いはあるものの、40歳から隔年でマンモグラフィを行うという点で枠組みが近い(1,8,9)。

検査モダリティ

検査モダリティとしては、現時点で集団に対する死亡率減少効果が示されているのはマンモグラフィのみであり、日本の対策型検診の基本検査として位置づけられる(8)。一方で、高濃度乳房では病変が見つかりにくいことが厚生労働省資料でも明記されている(8)。また、超音波検査は高濃度乳房においても病変を検出しやすい一方、評価が検査者の手技に依存する(8)。

超音波検査については、日本乳癌学会診療ガイドライン2022年版で、マンモグラフィとの併用検診は感度上昇・早期乳がん発見に有用であり、適切な精度管理が行われるならば弱く推奨される一方、超音波単独検診はエビデンスが乏しく弱く非推奨とされている(10,11)。また、J-STARTでは40〜49歳の日本人女性において、マンモグラフィ+超音波併用群はマンモグラフィ単独群より感度が高く(91.1% vs 77.0%)、特異度は低かった(87.7% vs 91.4%)(12)。

さらに、超音波併用により早期浸潤癌の検出が増え、中間期癌が減少したことが示されている一方、偽陽性や要精検の増加には留意が必要であり、死亡率減少効果についてはなお検証途上である(5,11,12)。高濃度乳房に対する追加の超音波検査やMRIについては、USPSTFは利益と不利益のバランスを判断するエビデンスが不十分としている(1)。

3Dマンモグラフィ(乳房トモシンセシス)は、日本乳癌学会診療ガイドライン2022年版において、乳がん検診要精検症例や症候例に対する診断マンモグラフィで追加することが弱く推奨されているが、住民検診の一次検査としては現時点で位置づけられていない(8,10,13)。乳房MRIは感度が高い一方で、一般集団を対象とした一次検診としては死亡率減少効果が示されておらず、検診において用いる際の標準的な評価手法も未確立であるため、現時点では推奨されていない(8,10)。

一方、BRCA病的バリアント保持者に対するサーベイランスとしては造影乳房MRIが強く推奨されている(14)。また、日本人でもBRCA1/2病的バリアント関連の遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)は重要なリスク背景である(4,14)。さらに、厚生労働省の第45回がん検診のあり方に関する検討会資料では、国立がん研究センターの乳がん対策型検診ガイドラインは2013年度版が最新であるため、同センターにガイドラインの更新を依頼してはどうかとの方向性(案)が示されており、報道でも改訂依頼が伝えられている(8,15)。

日本の他の学会からの推奨:

上記「検査モダリティ」項内の日本乳癌学会診療ガイドライン(2022年版)の記述を参照。

<参考文献>

  1. US Preventive Services Task Force, Nicholson WK, Silverstein M, et al. Screening for Breast Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement. JAMA. 2024;331(22):1918-1930. doi:10.1001/jama.2024.5534
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. 最新がん統計. From:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス. 乳房[がん種別統計情報]https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html
  4. Kawai M, Ohtani S, Iwasaki M, et al. The Japanese Breast Cancer Society clinical practice guidelines for epidemiology and prevention of breast cancer, 2022 edition. Breast Cancer. 2024;31(2):166-178. doi:10.1007/s12282-023-01531-9.
  5. Uematsu T. Rethinking screening mammography in Japan: next-generation breast cancer screening through breast awareness and supplemental ultrasonography. Breast Cancer. 2024;31(1):24-30. doi:10.1007/s12282-023-01506-w
  6. デンスブレスト対応ワーキンググループ. 対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する報告書. 2017 Mar 21. Accessed March 8, 2026. https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000158057.pdf
  7. Uematsu T. Equity in breast cancer screening for Asian women with dense breasts through ultrasonography: lessons learned from Japanese mammography screening and the J-START trial. Ultrasonography. 2025;44(1):42-47. doi:10.14366/usg.24149
  8. 厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課. 乳がん検診について. 第45回がん検診のあり方に関する検討会 資料1. 2025 Oct 10. Accessed March 8, 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001580557.pdf
  9. 厚生労働省. がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針. 厚生労働省健康局長通知別添(健発第0331058号).Originally issued March 31, 2008; revised December 24, 2025. Accessed March 8, 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001642974.pdf
  10. Kubota K, Nakashima K, Nakashima K, et al. The Japanese breast cancer society clinical practice guidelines for breast cancer screening and diagnosis, 2022 edition. Breast Cancer. 2024;31(2):157-164. doi:10.1007/s12282-023-01521-x
  11. 一般社団法人 日本乳癌学会. CQ1 Hand-Held(用手的)超音波検査は乳がん検診として推奨されるか?. 乳癌診療ガイドライン2022年版(Web版).Accessed March 8, 2026. https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/k_index/cq1/
  12. Ohuchi N, Suzuki A, Sobue T, et al. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial. Lancet. 2016;387(10016):341-348. doi:10.1016/S0140-6736(15)00774-6
  13. 一般社団法人 日本乳癌学会. CQ3 診断マンモグラフィにおいて乳房トモシンセシスを追加することは推奨されるか?. 乳癌診療ガイドライン2022年版(Web版). Accessed March 8, 2026. https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/k_index/cq3/
  14. 一般社団法人 日本乳癌学会. CQ2 BRCA病的バリアント保持者に対する乳癌サーベイランスには造影乳房MRIが推奨されるか?. 乳癌診療ガイドライン2022年版(Web版). Accessed March 8, 2026. https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/k_index/cq2/
  15. JIHO. 乳がん検診ガイドライン改訂、国がんに依頼. MTJ. 2025年10月22日. https://mtj.jiho.jp/news/system/1500
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