ACIP推奨:肺炎球菌ワクチン
ACIP Recommendations: Pneumococcal Vaccine
予防接種実施諮問委員会
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
日本語訳最終更新日: 2026年8月1日


予防接種実施諮問委員会
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
日本語訳最終更新日: 2026年8月1日
原文へのリンク:
ACIP Recommendations: Pneumococcal Vaccine
https://www.cdc.gov/acip-recs/hcp/vaccine-specific/pneumococcal.html
より、作成時点(2026年8月1日時点)で成人の推奨となっている論文の抜粋を日本語に訳しました。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/74/wr/mm7401a1.htm
50歳以上の成人における肺炎球菌結合型ワクチン使用推奨の拡大:
予防接種実施諮問委員会の勧告—米国、2024年
週刊報告 / 2025年1月9日 / 第74巻(第1号); 1–8
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/wr/mm7336a3.htm
米国成人における21価肺炎球菌結合型ワクチンの使用:
予防接種実施諮問委員会の勧告—米国、2024年
週刊報告 / 2024年9月12日 / 第73巻(第36号); 793–798
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/rr/rr7203a1.htm
19歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン:
予防接種実施諮問委員会の勧告—米国、2023年
勧告・報告 / 2023年9月8日 / 第72巻(第3号); 1–39
予防接種実施諮問委員会(ACIP)および米国疾病予防管理センター(CDC)は、成人の肺炎球菌ワクチンを年齢、肺炎球菌感染症のリスク因子、過去の接種歴に基づいて整理しています。PCVは肺炎球菌結合型ワクチン、PPSV23は23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチンを指します。以下は、成人向け推奨の要約日本語訳です。
| 対象・接種歴 | 接種の選択肢 |
|---|---|
| 肺炎球菌ワクチン未接種、または年齢を問わずPCV7のみ接種済み | PCV21、PCV20またはPCV15を1回接種します。PCV15を接種した場合は、PCV15接種から1年以上あけてPPSV23*を1回接種します。免疫不全状態†、人工内耳または髄液漏がある成人では、最短8週間の間隔を考慮できます。 |
| PPSV23のみ接種済み | 最後のPPSV23接種から1年以上あけて、PCV21、PCV20またはPCV15を1回接種します。 |
| PCV13のみ接種済み | PCV13接種から1年以上あけて、PCV21またはPCV20を1回接種します。 |
| 年齢を問わずPCV13を接種し、PPSV23を65歳未満で接種済み | 最後の肺炎球菌ワクチン接種から5年以上あけて、PCV21またはPCV20を1回接種します。 |
| 年齢を問わずPCV13を接種し、PPSV23を65歳以上で接種済み | PCV13とPPSV23による推奨接種シリーズを完了している、すなわちPPSV23を65歳以上で接種済みであるものの、PCV21、PCV20またはPCV15をまだ接種していない65歳以上の成人では、PCV21またはPCV20を1回接種するかについて、臨床的共有意思決定(shared clinical decision-making: SCDM)が推奨されます。接種する場合は、最後の肺炎球菌ワクチン接種から5年以上あけます。 |
[免疫不全状態†、髄液漏または人工内耳がある場合]
| 対象・接種歴 | 接種の選択肢 |
|---|---|
| 肺炎球菌ワクチン未接種、または年齢を問わずPCV7のみ接種済み | PCV21、PCV20またはPCV15を1回接種します。PCV15を接種した場合は、PCV15接種から8週間以上あけてPPSV23*を1回接種します。 |
| PPSV23のみ接種済み | 最後のPPSV23接種から1年以上あけて、PCV21、PCV20またはPCV15を1回接種します。 |
| PCV13のみ接種済み | PCV13接種から1年以上あけて、PCV21またはPCV20を1回接種します。 |
| PCV13とPPSV23 1回を接種済み | 最後の肺炎球菌ワクチン接種から5年以上あけて、PCV21またはPCV20を1回接種します。これにより肺炎球菌ワクチン接種シリーズは完了し、追加の肺炎球菌ワクチン接種は不要です。 |
| PCV13とPPSV23 2回を接種済み | 50歳到達時に、肺炎球菌ワクチンの推奨を再確認します。または、最後の肺炎球菌ワクチン接種から5年以上あけて、PCV21またはPCV20を1回接種します。PCV21またはPCV20を接種した場合、接種シリーズは完了し、追加の肺炎球菌ワクチン接種は不要です。 |
[慢性疾患§がある場合]
| 対象・接種歴 | 接種の選択肢 |
|---|---|
| 肺炎球菌ワクチン未接種、または年齢を問わずPCV7のみ接種済み | PCV21、PCV20またはPCV15を1回接種します。PCV15を接種した場合は、PCV15接種から1年以上あけてPPSV23*を1回接種します。 |
| PPSV23のみ接種済み | 最後のPPSV23接種から1年以上あけて、PCV21、PCV20またはPCV15を1回接種します。 |
| PCV13のみ接種済み | PCV13接種から1年以上あけて、PCV21またはPCV20を1回接種します。 |
| PCV13とPPSV23 1回を接種済み | 50歳到達時に、肺炎球菌ワクチンの推奨を再確認します。 |
脚注
* PCV15を接種したものの、PPSV23による推奨接種シリーズを完了していない成人では、PPSV23を利用できない場合、PCV21またはPCV20を1回接種できます。
† “免疫不全状態”:慢性腎不全、ネフローゼ症候群、免疫不全症、医原性免疫抑制、全身性悪性腫瘍、HIV感染、ホジキン病、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、固形臓器移植、先天性または後天性無脾症、鎌状赤血球症またはその他の異常ヘモグロビン症。
§ “慢性疾患”:アルコール依存症、慢性心疾患(うっ血性心不全および心筋症を含む)、慢性肝疾患、慢性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患、肺気腫および喘息を含む)、喫煙、糖尿病。
この節はACIP/CDC推奨の翻訳そのものではなく、日本国内の制度、薬事承認、血清型分布を理解するための補足です。ACP日本支部またはPMTFC独自の推奨文としてではなく、掲載時の参考情報として扱います。
わが国では、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は感染症法に基づく5類感染症の全数把握対象疾患です。COVID-19流行前の2018年および2019年におけるIPDの年間報告数は、いずれも人口10万人当たり2.65でした。65歳以上では、人口10万人当たりの年間報告数は2018年が5.47、2019年が5.59でした。
一方、米国では、2022年のIPD発生率は50~64歳で人口10万人当たり13.2、65歳以上で17.2と報告されています。米国では、50~64歳でも他の年齢群と比較してIPDの発生率が高く、65歳以上でさらに高くなっています。
日本の数値は感染症発生動向調査への届出に基づく年間報告数であり、米国の数値はActive Bacterial Core surveillanceに基づく発生率です。また、調査年、人口構成、届出制度およびサーベイランス方法が異なるため、数値を単純に比較することはできません。ただし、両国とも年齢が高い成人でIPDの疾病負担が大きいことが示されています。
肺炎は、日本における主要な死亡原因の一つです。2025年人口動態統計では、肺炎は死因第5位、誤嚥性肺炎は第6位でした。(5) 両者は人口動態統計上別の死因分類ですが、肺炎関連死亡の疾病負担は大きいと考えられます。肺炎球菌感染症には肺炎や敗血症などが含まれ、肺炎球菌ワクチンは重症な肺炎などの予防に有効とされます。(6)
厚生労働省は、2026年度から高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種に用いるワクチンを、PPSV23から沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)へ変更しました。対象は65歳の方、および60〜64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能障害により身の回りの生活が極度に制限される方、またはHIVによる免疫機能障害により日常生活がほとんど不可能な方です。定期接種では、PCV20を1回筋肉内に接種します。PPSV23、PCV15、PCV21は、2026年4月以降の高齢者肺炎球菌感染症の定期接種には使用されません。
65歳を超える方を対象とした経過措置は、現時点では設けられていません。厚生労働省は、今後PCV21の定期接種化を検討する際に、経過措置の必要性を含めて改めて検討する方針を示しています。(7) この点はACIP/CDC推奨の翻訳ではなく、日本での実装に関する補足として記載します。
日本ではPPSV23、PCV15、PCV20に加え、PCV21(キャップバックス®)が2025年に高齢者および肺炎球菌感染症のリスクが高い成人を対象として承認されています。日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会の第8版では、2026年4月以降、肺炎球菌ワクチン未接種者で定期接種対象となる方について、PCV20の定期接種を受けられるよう接種スケジュールを決定することが示されています。任意接種としては、PCV20またはPCV21の単回接種に加え、PCV15-PPSV23連続接種も選択肢とされています。
日本の高齢者にはPPSV23既接種者が少なくありません。合同委員会は、PPSV23またはPCV13、PCV15、PCV20の既接種者について、前回の肺炎球菌ワクチン接種から1年以上の間隔をあけて、PCV20またはPCV21を任意接種として接種できるとしています。ただし、接種歴、基礎疾患、前回接種からの期間などを確認し、個別に判断する必要があります。
図. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2026年4月以降)
日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会資料を一部改変(8)(9)
注:本図は日本国内の制度および合同委員会資料に基づく補足であり、ACIP推奨の日本語訳ではありません。図にはPCV15-PPSV23連続接種の選択肢を示していません。PCV20またはPCV21接種後の再接種については、現時点で免疫原性および安全性に関するデータが十分ではありません。
国内の65歳以上成人を対象としたIPDサーベイランスでは、小児へのPCV導入後の間接効果などを背景として、原因菌の血清型分布が変化しています。2022-2024年の血清型カバー率は、PCV20で50%、PCV21で78%と報告されています。(8)(9) PCV21は成人のIPDを生じる血清型をより広くカバーし得る一方、2026年7月時点で、日本の定期接種ワクチンではありません。PCV21の免疫原性と安全性については、海外第III相試験、日本人高齢者を対象とした第III相試験、既接種者を対象とした第III相試験で検討されています。(10)(11)(12)
ACIPは、血清型4による肺炎球菌感染症が比較的多い一部地域では、血清型4を含まないPCV21ではなく、PCV20またはPCV15-PPSV23連続接種を考慮するよう示しています。(1)(3) 一方、日本では血清型4の占める割合は高くないため、この地域特有の留意事項をそのまま日本に適用する必要性は限定的と考えられます。ただし、国内の血清型分布は継続的に変化するため、最新のサーベイランスを確認する必要があります。(8)(9)
国内の合同委員会は、64歳以下であっても、慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎臓病、慢性肝疾患、糖尿病、自己免疫性疾患、悪性腫瘍・臓器移植後、機能的または解剖学的無脾症、慢性髄液漏、人工内耳、免疫不全状態などを有する方では、肺炎球菌感染症のリスクが高く、ワクチンによる予防が重要であるとしています。成人のハイリスク者に対しては、PCV20またはPCV21の単回接種、またはPCV15-PPSV23連続接種などの選択肢が示されています。PCV21の接種対象は成人のみです。
ACIPの推奨には、年齢に基づく一律の推奨、リスク因子に基づく推奨、および臨床的共有意思決定(shared clinical decision-making: SCDM)に基づく推奨があります。SCDMは、単に患者の希望のみで接種を決めることを意味しません。医療従事者が、患者ごとの肺炎球菌感染症リスク、既接種歴、追加接種によって期待される利益などを評価し、その情報を患者と共有した上で接種の要否を決定するACIPの推奨区分です。日本の「定期接種」または「任意接種」という制度上の区分とは同義ではありません。CDCも、SCDMについて、個々の患者の特性やリスクを考慮して医療従事者と患者が判断する推奨と説明しています。(14)