ACP Japan Chapter

心血管リスクを有する成人における心血管疾患予防のための健康的な食事、
身体活動と行動カウンセリングによる介入について
Healthy Diet and Physical Activity for Cardiovascular Disease Prevention in Adults With Cardiovascular Risk Factors: Behavioral Counseling Interventions (November 24, 2020)

米国予防医療専門委員会 推奨声明
US Preventive Services Task Force Recommendation Statement(USPSTF)
日本語最終更新日:2026年2月20日

USPSTF推奨の日本語訳:
対象 推奨 グレード
心血管リスクを有する成人 USPSTFは、心血管のリスクを有する成人に、健康的な食事と身体活動を促進するための行動カウンセリングを提供または紹介することを推奨します。 B
原文リンク:

https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/healthy-diet-and-physical-activity-counseling-adults-with-high-risk-of-cvd
(accessed 2026/2/20)

重要性

心血管疾患(CVD)は米国における死亡原因の第1位である。(2)

CVDの修正可能な危険因子としては、喫煙、過体重・肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、運動不足、不健康な食事などが知られている。健康的な食事や身体活動に関する国のガイドラインを遵守している成人は、そうでない成人に比べて心血管系の罹患率や死亡率が低いとされている。CVDリスクの状態にかかわらず、すべての人が健康的な食行動と適切な身体活動から健康上の利益を得ることができる。

「健康的な食事」とは、「健康的な体重を達成・維持し、健康を維持し、疾病を予防するのに役立つ、バランスのとれた多様な食品・飲料」と定義される。健康的な食生活を促進するための食事カウンセリングでは、米国農務省および米国食品医薬品局(FDA)が推奨しているように、果物、野菜、全粒穀物、無脂肪または低脂肪乳製品、赤身のタンパク質、良質な油の摂取を増やし、ナトリウム濃度の高い食品、飽和脂肪酸またはトランス脂肪酸、糖分の多い食品の摂取を減らすことに重点を置いている。

「身体活動」とは、広義には、全体的な健康と体力を増進または維持する身体活動のことである。米国保健社会福祉省は、18歳以上の成人に対し、週に少なくとも150分の中強度の、または75分の強度の有酸素性身体活動を行い、さらに週に少なくとも2回のレジスタンス・トレーニング(ウェイト・リフティングなど)を行うことを推奨している。

心血管リスクとは、単一のリスク因子または複数のリスク因子(例えば、メタボリックシンドローム)の上昇として特徴づけられる。心血管リスクは、Pooled Cohort EquationsやFramingham Risk ScoreなどのCVDリスクツールを用いて推定することができる。本勧告で対象とする心血管疾患リスク因子には、脂質異常症、血圧または高血圧の上昇などが含まれる。(3)

行動カウンセリング介入は通常、食事と身体活動に関するカウンセリングを組み合わせたものであり、通常、長期間にわたって個別またはグループでのカウンセリングセッションを含む複数回のカウンセリングを行う集中的なものである。介入では通常、中央値で12回のカウンセリングが行われ、6~18ヵ月にわたって合計6時間のカウンセリングが行われる事が多い。介入には通常、1対1の面談時間が含まれ、動機づけ面接や、目標設定、問題解決、自己モニタリングなどの行動変容の手法が使われる。プライマリケア医だけでなく、看護師、管理栄養士、理学療法士、カウンセラー、ライフスタイルコーチなど、幅広い特別な訓練を受けた専門家がこれらの介入を実施できる(1)。

一般的な食事に関するカウンセリングのアドバイスには、飽和脂肪酸、塩分、糖分の摂取を減らし、果物、野菜、穀物(雑穀)の摂取を増やすことが含まれる。米国においてはDietary Approaches to Stop Hypertension(DASH)食、減塩食、地中海食が一般的に推奨される食事法である。一方で、身体活動に関するカウンセリングでは、患者が週90~180分の中等度から強度の活動を行うことに重点を置く。(4)

本推奨を行うにあたってUSPSTFが行ったSystematic Reviewでは、健康的な食事と身体活動を組み合わせた介入のエビデンスとして合計94本の臨床試験が検討された(4)。

介入の強度としては、6%が低強度、49%が中強度、45%が高強度とされた(強度は医療従事者との診察やカウンセリング量に基づく。31~360分を中強度とした)。参加者のほとんどが過体重または肥満であり、平均BMIは29.8であった。

94本の臨床試験のうち、29本で心血管イベント発生率、死亡率などの生命予後に関するアウトカムが報告されており、うちあらゆる心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患など)の発生率を含めた複合アウトカムを報告している9本の臨床試験を検討した結果、行動カウンセリングを受けた介入群で有意に心血管イベント発生リスクが低下していることが確認された(統合相対リスク(pooled RR), 0.80 [95% CI, 0.73 ~ 0.87]; 9本のRCTより算出, n = 12,551, I2 = 0%)。

また、総死亡率については8本の臨床試験で報告されており、それらは中~高強度の介入を実施していたが、統計学的に有意な総死亡率の低下は認められなかった(pooled RR, 0.89 [95% CI, 0.71 – 1.11], n = 17,939, I2= 0%)。ただ、これについては総死亡率を評価するために必要な検出力が足りなかったという考察がある。他のアウトカムとしては血圧、脂質レベル、体重、血糖値、複合心血管系リスクスコアの測定値が含まれており、統計的に有意な変化としては、収縮期血圧(-1.8mmHg[95%CI、-2.5~-1.1])、拡張期血圧(-1.2mmHg[95%CI、-1.6~-0.8])、総コレステロール値(-3.5mg/dL[95%CI、-5.6~-1.4])、LDLコレステロール値(-2.1mg/dL[95%CI、-4.1~-0.2])、空腹時血糖値(-2.3mg/dL[95%CI、-3.6~-1.0])、体重(-1.6kg[95%CI、-2.1~-1.1])などであった。すべて、12~24ヶ月の追跡期間中に改善がみられた。

食事習慣の改善については度合いが小さいが有意に改善がみられており、飽和脂肪酸摂取量の対総摂取カロリー割合の低下(-1.5%[95%CI、-1.9~-1.1])、フルーツ・野菜の摂取量の増加(0.7単位/日[95%CI、0.1~1.3])、食物繊維の摂取量の増加(1.3g/日[95%CI、0.1~2.6])などがみられた。

運動習慣自体のアウトカムについてはばらつきが多く有意ではなかったが、明確に目標運動量を設定するカウンセリングを行った研究では、介入群でその目標を達成する可能性が有意に高かった(pooled RR 1.22 [95%CI、1.00~1.50])。

本Reviewでは最後に課題として、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発生や死亡率への影響をしっかり評価するに足りる大規模かつ長期の研究は未だに不足しているという点に言及があった。

日本のデータ

日本人は欧米とは違い、伝統的な和食が身近であるため、日本動脈硬化学会は「日本食:The Japan Diet」を推奨している。これは肉の脂身や動物性脂肪の摂取が少なく、大豆、魚、野菜、海藻、きのこ、果物の摂取量が多いものを指す。

この和食的な摂取パターンは、動物性食品を主に摂取している集団や、DFA(high-dairy,high-fruit-and-vegetable,low-alcohol)集団に比べてより塩分摂取量が多く(8.0g vs 7.1g)、高血圧の有病率も高かったが、心血管関連死のリスクを低下させるというコホート研究が報告されている。(5)そのため、日本循環器学会は日本食を推奨しながらも、減塩で食べることを推奨している。また、脂質については特に食の欧米化が進んでおり、目標脂質エネルギー比の20~25%に対して20歳代は48.6%、60歳代でも36.4%と優に超えているため、抑えるように具体的な代替食や調理方法なども提示しながら推奨している。(6)

心血管疾患におけるリハビリテーションガイドラインでは、運動については二次予防としての推奨が主であったため、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドラインを参照した(7)。

食事療法と運動療法が、内臓脂肪の蓄積という動脈硬化の独立した危険因子を低減させることにつながるとされており、本ガイドラインでも推奨されている(8)。

他にも一日合計30分以上の有酸素運動を週3以上(可能であれば毎日)、もしくは週に150分以上中強度(ジョギング、テニス、水泳)以上の有酸素運動やレジスタンス運動は血清脂質レベルの改善が期待でき、また動脈硬化性疾患の発症率も低下するとされ推奨されている。

行動カウンセリング介入の効果についても言及はあり、本邦において行われている特定保健指導を受け、かつ後日健診も受診した集団は、特定保健指導非利用者と比べて脂質レベルの改善やウエスト周囲長、BMIの改善が有意に高い(9,10)という研究成果もあり、推奨されている。特定保健指導は健康行動理論に基づき、専門の保健師や管理栄養士により行われている日本に特有のもので、集団の行動変容に対する自己効力感や生活習慣病発症リスクの認識などを促進している。英国にも同様の介入システムがあり(Health Action Process Approach)、一般的な方法と比べた場合の優位性が示されている。(11)

参考文献

  1. Healthy Diet and Physical Activity for Cardiovascular Disease Prevention in Adults With Cardiovascular Risk Factors: Behavioral Counseling Interventions. November 24, 2020. Accessed October 17, 2025. https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/healthy-diet-and-physical-activity-counseling-adults-with-high-risk-of-cvd
  2. CDC. Heart Disease Facts. Centers for Disease Control and Prevention. May 16, 2023. Accessed March 29, 2024. https://www.cdc.gov/heartdisease/facts.htm
  3. Cardiovascular Disease (10-year risk). Accessed March 30, 2024. https://www.framinghamheartstudy.org/fhs-risk-functions/cardiovascular-disease-10-year-risk/
  4. CDC. Heart Disease Facts. Centers for Disease Control and Prevention. May 16, 2023. Accessed March 29, 2024. https://www.cdc.gov/heartdisease/facts.htm
  5. Cardiovascular Disease (10-year risk). Accessed March 30, 2024. https://www.framinghamheartstudy.org/fhs-risk-functions/cardiovascular-disease-10-year-risk/
  6. US Preventive Services Task Force, Krist AH, Davidson KW, et al. Behavioral Counseling Interventions to Promote a Healthy Diet and Physical Activity for Cardiovascular Disease Prevention in Adults With Cardiovascular Risk Factors: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement. JAMA. 2020;324(20):2069-2075. doi:10.1001/jama.2020.21749
  7. Shimazu T, Kuriyama S, Hozawa A, et al. Dietary patterns and cardiovascular disease mortality in Japan: a prospective cohort study. Int J Epidemiol. 2007;36(3):600-609. doi:10.1093/ije/dym005
  8. 日本循環器学会一般社団法人.心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf
  9. Japan Atherosclerosis Society (JAS) Guidelines for Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2022. https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_3_230210.pdf
  10. Neeland IJ, Ross R, Després JP, et al. Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019;7(9):715-725. doi:10.1016/S2213-8587(19)30084-1
  11. Ryo M, Nakamura T, Funahashi T, et al. Health education “Hokenshido” program reduced metabolic syndrome in the Amagasaki visceral fat study. Three-year follow-up study of 3,174 Japanese employees. Intern Med. 2011;50(16):1643-1648. doi:10.2169/internalmedicine.50.5039
  12. Nakao YM, Miyamoto Y, Ueshima K, et al. Effectiveness of nationwide screening and lifestyle intervention for abdominal obesity and cardiometabolic risks in Japan: The metabolic syndrome and comprehensive lifestyle intervention study on nationwide database in Japan (MetS ACTION-J study). PLoS One. 2018;13(1):e0190862. doi:10.1371/journal.pone.0190862
  13. Greaves C, Gillison F, Stathi A, et al. Waste the waist: a pilot randomised controlled trial of a primary care based intervention to support lifestyle change in people with high cardiovascular risk. Int J Behav Nutr Phys Act. 2015;12:1. doi:10.1186/s12966-014-0159-z
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