
思春期および成人におけるC型肝炎ウイルス感染症:スクリーニング
Hepatitis C Virus Infection in Adolescents and Adults: Screening (March 02, 2020)
米国予防医療専門委員会 推奨声明
US Preventive Services Task Force Recommendation Statement
日本語最終更新日:2026年1月23日
原文リンク
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/hepatitis-c-screening
(以下は要約の日本語訳の紹介です。詳細は原文を御覧ください。)
(推奨の日本語訳)
推奨の要約:
| 対象 | 推奨 | グレード |
|---|---|---|
| 18-79歳の成人 | USPSTFは、18歳から79歳までの成人のC型肝炎ウイルス(HCV)感染症のスクリーニングを推奨する。 | B |
要約
重要性
米国においてC型肝炎ウイルス(HCV)は最も一般的な慢性血液媒介性感染症であり、慢性肝疾患に伴う合併症の主要な原因である。HCVは、HIVを含む届出対象の他の主要な60感染症を合わせたものよりも多くの死亡と関連している。急性HCV感染症の症例は、静注薬物使用の増加とサーベイランス体制の改善によりこの10年間で約3.8倍に増加している。
目的
USPSTFは、2013年の推奨を改訂するため、思春期および成人におけるHCV感染スクリーニングに関するエビデンスを再評価した。
対象者
本推奨は、既知の肝疾患を有さない18~79歳の無症候性成人に適用される。
エビデンスの評価
USPSTFは、中等度の確信をもって、18~79歳の成人におけるHCV感染スクリーニングが実質的な純利益もたらすと結論した。
推奨(Recommendation)
USPSTFは、18~79歳の成人に対してHCV感染スクリーニングを行うことを推奨する(グレードB)。
臨床要約
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| USPSTFの推奨は? |
18~79歳の成人:グレードB 成人に対してC型肝炎ウイルス(HCV)感染のスクリーニングを推奨する。 |
| 誰に適用されるか? | 既知の肝疾患のない18~79歳の無症候性の成人(妊婦を含む)。 |
| 新しい点は? | 本推奨はスクリーニング対象を拡大している。USPSTFは18~79歳の全ての成人をスクリーニングすることを推奨する。従来は1945~1965年生まれの成人とリスクのある成人に限定されていた。 |
| どのように実施するか? |
スクリーニング:18~79歳の成人に対し、抗HCV抗体検査を行い、陽性の場合は確認のためのPCR検査を実施する。 ・USPSTFは18歳未満や79歳以上であっても感染リスクが高い者(例:過去または現在の静注薬物使用歴がある者)のスクリーニングも考慮することを提案する。 陽性の場合は、非侵襲的検査による診断評価を行い、治療は通常8~12週間の経口直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を用いる。 |
| 重要な留意点 |
• スクリーニングは任意であり、患者が知識を持った上で実施することを伝える。 • HCV感染について、感染の仕組み(感染し得る場合/し得ない場合)、陽性・陰性結果の意味、治療の利点と害について説明する。 • 患者が質問でき、スクリーニングを拒否できる機会を提供する。 |
| 頻度は? |
成人の多くは1回限りのスクリーニング。 HCV感染リスクが持続する者(例:過去または現在の静注薬物使用者)は定期的にスクリーニングを行う。 (どの程度の頻度で繰り返すかについてのエビデンスは限られている。) |
表.HCV感染症スクリーニングに関するUSPSTFの論拠のまとめ
| 論拠 | 評価 |
|---|---|
| HCV感染者の検出 |
• HCV検査(抗HCV抗体スクリーニング後、陽性者に対してHCV RNAによる活動性感染の確認)により、HCV感染を正確に検出できるという十分な根拠がある。 • 全ての成人に対する一回の検査、および新たなHCV感染のリスクが持続する者への定期的な検査について十分な根拠がある。 • 再検査の適切な時期について根拠は不十分である。 |
|
早期発見と治療の利益 (直接または間接的根拠に基づく) |
• 無症候性成人において、HCVスクリーニングが健康アウトカムに及ぼす利益について直接的な根拠はない。成人および思春期の治療が健康アウトカムに及ぼす効果についても直接的な根拠は不十分である。しかし、新しいDAA療法は、18~79歳の成人において極めて高い割合(95%超)でSVR(持続的ウイルス学的陰性化)をもたらし、思春期においても十分な根拠がある。 • 抗ウイルス療法後のSVRと健康アウトカムの改善(全死亡率、肝疾患死亡率、肝硬変、肝細胞癌のリスク低下)との一貫した関連について十分な根拠がある。 • スクリーニング検査の精度と有効な介入の存在を踏まえ、USPSTFは、間接的な根拠として、18~79歳の成人におけるスクリーニングと治療の利益の大きさは十分であると判断した。 |
| 早期発見と治療の害 |
• スクリーニングの起こりうる害として、不安、患者ラベリング、スティグマ感情がある。HCVスクリーニングの害についての直接的な根拠は不十分である。 • 現在推奨されているDAA療法は、従来のインターフェロン併用療法よりも害が少なく、治療期間も8~12週間と短い。DAA療法が重篤な有害事象や有害事象による中止と関連する割合は低いという十分な根拠がある。 • 既知の治療による害、スクリーニングの高い精度、採血による害が低いことを考慮すると、スクリーニングと治療の全体的な害は小さいと結論づけるに十分な根拠がある。 |
| USPSTFの評価 | USPSTFは、中等度の確信をもって、18~79歳の成人におけるHCV感染スクリーニングが実質的な純利益をもたらすと結論づけた。 |
※参考:日本のデータ:
本邦においても HCV感染症は長らく肝炎、肝硬変の原因疾患として重要な原因疾患でした。2015年の慢性HCV感染者数は、レセプト・検診データ、初回献血者のデータをもとに、88~133万人(うち未診断または未治療者22~65万人)と推計されています1。これは全人口の0.7~1%(未診断または未治療は0.17~0.51%)にあたり米国の0.7%と同水準です2。急性C型肝炎は5類感染症の全数把握疾患となっており年間23-58例が報告されていますが3、未診断例や無症候感染があることから実際のHCV感染の罹患者は多いと考えられます。感染経路が判明している感染例では米国とは異なり静注薬物常用は3.7%と少なく、性的接触、針などの鋭利なものの刺入、輸血血液製剤による感染が見られています(2010~2020年)。今後現状の対策状況が維持されるとすると、2025年の慢性HCV感染者数は、高齢感染者の自然減少とスクリーニングによる診断治療により45~84万人(うち未診断または未治療者14~46万)となり、2035年には14~35万人(うち未診断または未治療者5~26万人)まで減少すると推計されています1。2035年でも未診断・未治療者が5万人以上いることを考えると引き続きスクリーニングの推進が重要と考えられています。
日本の他の学会、厚生労働省からの推奨
日本肝臓学会
日本肝臓学会はC型肝炎治療ガイドラインを公表しています。主に治療適応と診療手順に焦点が当てられており、C型肝炎ウイルスのスクリーニングの対象基準や年齢については明確な推奨は記載されていません4。
厚生労働省
現在厚生労働省はC型肝炎排除を目標に、過去に肝炎ウイルス検査を1回も受けたことがない人に少なくとも1回は肝炎ウイルス検査を受けるユニバーサルスクリーニングを推奨しています5。過去に検査を受けたことがない場合、肝炎ウイルス検診として健康増進事業(40歳以上)と特定感染症検査等事業(それ以外の年齢)の一環で、HCV抗体測定(中、低力価ではHCV-PCR検査)を保健所または所定の医療機関において無料で受けることができます。また肝炎治療促進事業としてDAA療法は医療費助成を受けることができます6。
- Tanaka J, Kurisu A, Ohara M, Ouoba S, Ohisa M, Sugiyama A, Wang ML, Hiebert L, Kanto T, Akita T. Burden of chronic hepatitis B and C infections in 2015 and future trends in Japan: A simulation study. Lancet Reg Health West Pac. 2022 Mar 16;22:100428. doi: 10.1016/j.lanwpc.2022.100428. PMID: 35637862; PMCID: PMC9142742.
- 総務省統計局. 平成27年度国勢調査.
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/ (2025.9.11閲覧) - 国立感染症研究所. 急性C型肝炎. 2006年4月~2020年10月.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/hepatitis-c-m/hepatitis-c-iasrtpc/10125-491t.html (2024.4.17閲覧) - 日本肝臓学会. C型肝炎治療ガイドライン(第8.4版) 2025年4月.
https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_c.html (閲覧2025.9.11) - 厚生労働省. 肝炎ウイルス検査について.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/kangan/hepatitis_kensa.html (閲覧2025.9.11) - 厚生労働省. 肝炎治療特別促進事業.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/kangan/iryouhijyosei.html (閲覧2025.9.11)
